なぜ「円安は日本再生の最強の処方箋」なのか

伝説のトレーダー、藤巻健史氏が語る「本物の円安論」(上)

にもかかわらず識者からは、企業の業績不振を「リーダーシップの欠如」や「意思決定の遅れ」といった経営サイドの問題に帰するコメントが聞こえてきます。それではあまりにも経営者に酷でしょう。特定の1社、2社がダメだというならわかりますが、現実はそうではありません。パナソニックやシャープなどの家電メーカーをはじめ、日本を代表する大企業や産業が軒並み落ち込んでいるわけですから、やはり国に何か根本的な誤りがある、と考えるのが自然ではないでしょうか。問題は円高であり、それを是正できない為替政策の誤りなのです。

円高のハンディキャップに耐えきれず、企業が今以上に生産移転を進めてしまったら、仕事や給料を得るのは外国人で、法人税や従業員が支払う所得税、消費税など各種の税金を収入として得るのも外国政府です。一方で日本人は、円高によって働く機会を奪われます。雇用問題や若者の就職問題もつまるところ、為替の問題だということです。

日本は実質、社会主義の国

「円は隠れた基軸通貨」という円高論者は、「国内の余剰資金が海外へ出ていき、逆に避難通貨としての円を目指して世界のおカネが日本に流れ込んでくる」から、「世界は円なしには生きられず、円はますます強くならざるをえない」と説明します。その絵空事がもし現実であったなら、どんなにすばらしいか。景気の悪い時期には、国内の資金がドラスチックに海外へ流れて、為替は適正な円安レベルに動いていたはずです。円安が、景気回復の特効薬になっていたことでしょう。本来、為替相場はうまく働けば、国力に応じて適正かつ柔軟に変動する「経済の自動安定装置」の役割を果たすのですから。

しかし現実はそうではなかった。だから日本は、身分不相応な円高で苦しみ続けているのです。では、なぜ海外へ資金が出ていかないのでしょうか。

結論から申し上げると、日本という国が実質、社会主義だからです。日本が資本主義国家で市場原理が正しく働いているなら、20年も名目GDPが伸びていないような国の、利回り1%割れの国債などに資金が投入されるわけがありません。よりリターンの多い海外の投資先・運用先に向けて、おカネがどんどん流れていくのが当たり前です。第一、そうでないと株主が黙っていないはずです。本来、それが市場原理なのです。

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