東大を3度落ちた男が辿り着いたカフェ経営 映画や穀物栽培など手がける人気店の裏側

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動き出すと、トントン拍子で進み、最初の三軒茶屋の物件はコンペだったのですが、用意していた企画書のおかげで通り、こうして、無事『カフエ マメヒコ』は誕生しました。発端となった、その子は、もう別の道に進んでいましたが(笑)。

すぐに役立つかはわからないけど、大切にしたいこと

――いよいよセレンディピティの結晶としてスタートした「カフエ マメヒコ」。

井川氏:実際にはじめてみたら、まあ大変。シミュレーションが効かない。「マメヒコとは、こうあるべきだ」と、哲学を書き込んだノートも作っていましたが、全然その通りにならない。3年ぐらい、朝から晩まで毎日お店に顔を出していましたが、「もう、向いていないんじゃないか」と思うほどでした。そこで少し外から離れて見てみたんです。

すると、不思議なことに、だんだんと「こだわり」を感じてくれるお客さんの声がお店に届くようになってきました。放っておいたら、リズムが伝わる。距離をあえて置く、「不在の存在感」というものを感じました。短期間で評価の出る価値観とは違うものが、カフェにはまた別の価値観があるんじゃないかと。マクロでみたら、見誤ることもある。映像でトリミングする世界ではなく、長いスパンでものを見る舞台のような存在なのかもしれない。

――そうして少しずつ育っていったマメヒコイズムを、冊子『M-Hico』や、ラジオ、そのほかの取り組みで伝えています。

井川氏:理想を語っても「とはいえ」で否定が始まるのが常ですが、ちゃんとやっていけることを伝えたい。今日、お話した「こうするしかなかった」で進みながら、本当にやりたいこと、セカンドラインから王道ににじり寄っていく姿。二十代になって、初めて感じた劣等感との戦い。これを世の中になんとか、リンクできないかと思っています。

連続ドラマや連載小説、長い時間軸で評価されるもの、渾身の一作じゃない世界で、それを表現していきたいですね。

「世の中のマスに対するアンチテーゼ」も、アンチのままでいいとは思っていません。もっとマスにして伝えていくことも考えています。それがどんな形で表現されていくか。これから先の姿は、ぼくにもわかりません。けれど、その可能性を信じられる人たち、まだ見ぬ人たちとのセレンディピティを大切にしながら、一緒にマメヒコを創っていきたいと思います。

(インタビュー・文/沖中幸太郎)

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アルファポリスビジネス編集部

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