「2つの過剰」に苦しむ世界の工場・中国 景気・経済観測(中国)

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過剰感があるのは在庫ばかりではない。生産能力の過剰感も依然として強い。


 図表1は、中国製造業の資本ストック循環図である。推計にあたって除却率などで大胆な仮定を置いているため、一定の幅をもってみる必要はあるが、4兆元という大規模な景気刺激策が本格的に執行された2009年に資本ストックが急激に積み上がり(すなわち右上方に点が移動)、その後ゆっくり調整が進みつつあることがわかる(すなわち左下方に点が移動)。2012年現在、期待成長率でみて10~15%の間に循環図上の点が位置している。

しかし、この期待成長率の水準よりも、実際の2012年の実質GDP成長率は、はるかに低い7.8%である。また、今後中国経済が2桁成長に回帰する可能性も非常に低い。中国製造業の資本ストック調整はまだ道半ばといわざるをえない。

過剰な生産能力、対応には政府も苦慮

中国政府も生産能力の過剰問題への警戒感を緩めてはいない。例えば、2012年12月の中央経済工作会議で、習近平総書記は「鉄鋼、非鉄金属、セメント、石炭化学、ガラス板、造船、風力発電設備、多結晶シリコンで生産能力が過剰な状態にある」と指摘したと伝えられている。また、2013年1月には工業・情報化部など12の政府部門が、自動車、鉄鋼、セメント、造船、電解アルミといった9業種で合併・再編を推し進めるとの方針を発表している。

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