「サカタのタネ」の期待の星 大気汚染を浄化する新品種
今年3月末、千葉・幕張メッセで開催された「日本フラワー&ガーデンショウ」。参加した有力企業の1社、サカタのタネのブースで、ある実験が行われた。
用意したのは二つの密閉装置。一方には、従来の園芸植物「インパチェンス」を、もう一方には同社がインパチェンスの種間雑種により開発した「サンパチェンス」の鉢植えをセット。高濃度の二酸化窒素(NO2)を封入し、時間ごとの濃度変化を計測した。すると、NO2濃度が半減するのに、従来のインパチェンスが実験開始から40分かかったのに対し、サンパチェンスはたったの5分。さらに15分後には、ほとんど吸収されたことを意味する環境基準0・04~0・06ppm以下に到達。その後は限りなくゼロに近づいた。
地面より10度以上低い 従来植物下回る表面温度
この新しい品種に、サカタのタネの期待が高まっている。
もともとは、「夏の花壇に向く新しい花」(坂田宏社長)として開発されたサンパチェンス。従来のインパチェンスは夏の暑さに弱く、日本の酷暑下では株は大きくならない。風雨にさらされるとすぐに弱る欠点があった。これに対し、サンパチェンスは強い日差しと高温の耐暑性に優れ、生育が旺盛。シーズンには、鉢植えだと従来品種の倍以上の約60センチメートル、露地植えでは1メートルもの大株になる。そのうえ長期間楽しめる開花持続性を持たせることに成功した。
開発は地中海に面するフランスのカンヌ、アメリカのフロリダ、日本では静岡・掛川など、日差しの強い地域で試作が行われ、2006年5月に海外で先行発売された。欧州ではフランス、イタリア、ドイツなど南欧ですでに評価が高く、米国では大手小売りチェーン、ホーム・デポと専売契約している。
だが、何といっても大きなウリは、やはりその環境浄化能力。冒頭のNO2実験のほかにも、二酸化炭素(CO2)では、インパチェンスの4~6倍の高い炭素固定能力を持つことが判明。さらに、シックハウス症候群の原因物資であるホルムアルデヒドについても、従来の園芸植物に比べ3~4倍の浄化能力を持つことが実験結果で出ている。
そればかりではない。サンパチェンスが環境面から注目された理由に、その「打ち水」効果がある。
昨年7月、実験圃場の表面温度が約42度だったとき、園芸植物の表面温度はインパチェンスやベゴニアが35度であったのに対し、サンパチェンスは31・5度とさらに4度近く低かった。地面の温度からでは10度以上低かったことになる。