世界中の「ガリ勉」たちが集結した結果 トップスクールが実践する極めて合理的な選抜の方法(後編)

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とにかく、多くの人にチャンスを!

日本のように試験を受けに実際に大学の建物まで行かなければならないとなると、海外に住んでいる人がわざわざ受験をしようなどとは、よほどのことでもない限り思わないだろう。

また、経済学の大学院のくせに経済学の試験がないとは一体どうなってるんだろうか? とも思ったが、これも、広い範囲から優秀な学生――彼らが学部時代に必ずしも経済学を勉強しているとは限らない――を集めるためだと思うと説明がつく。

前にも書いたように、現代の経済学研究にはある程度の数学の素養が必須なので、大学で数学や物理などを勉強していた学生は実は結構欲しい人材だったりする。

さらに、海外の大学ではマルクス経済学など俗に「非主流派経済学」といわれる分野の教育を行っている場合が時々あるのだが(特に昔は多かったらしい)、これらの「経済学」と現代の主流的な経済学の間には、現状ではほとんど関係がない。

経済学もいろいろだから

そこまで極端でない場合でも、世界の学部教育で教えられている経済学のスタイルやレベルは実にさまざまだ。となると、経済学部出身者であっても経済学のテストで一律に能力を測るのは難しい。

GREの数学が、ほとんど誰にでも解けてしまう簡単な算数の試験であることだけには、なかなか納得がいかないが、海外で広く受験できる統一テストがほかにないからには、とかく誰にとっても受験しやすい試験を使っていることに、ある程度の合理性があるようにも思える。

さらに、アメリカの方法は、「効率性」だけでなく、「公平性」の面からも悪くはないかもしれない。

さっき日本式の筆記試験は公平で客観的だと書いたけれども、これはあくまで実際に日本の大学院を受験する学生の間でのことだ。当たり前だが、そもそも言葉や地理的な条件などのために、受験できない(選択肢にも挙げない)人がたくさんいる。

だとすると、何を措いてもなるべく多くの学生に受験資格を与えるアメリカの方式は、ある面では日本の制度よりも公平なのかもしれない。

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