サラリーマン大家、「空前ブーム」の夢と現実 冷遇をバネに年1400万円を稼ぐ会社員も

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不動産投資というと、カネと時間を持て余したシニア富裕層のたしなみというイメージがあった。しかしそれは過去のものだ。投資用不動産業者大手の日本財託の担当者は言う。「当社が主催する初心者向け不動産投資セミナーは、ここ1~2年で20代や30代の参加者が非常に多くなった。特にこの半年は夫婦・カップルが増えている」。

投資家層が変わり、今や多くが普通の会社員だ。上記特集で不動産投資家139人を対象に実施したアンケートでは、全体の約5割が年収400万~800万円の中間層で、400万円以下を元手にスタートしたと回答した。冒頭の谷口さんのように不本意な人事異動をきっかけに勤め先への収入依存リスクを肌身に感じ、副業感覚で始める人も多い。

不動産の実物投資は、ほかの投資対象と比べると利回りの高さに特徴がある。預金や国債は言うまでもなく高配当型ETFや、同じく不動産に投資をするJ―REIT(不動産投資信託)と比べても高い。しかも物件価格、賃料の値動きが安定的なのでインカムゲインを主体に長期で資産形成をする手段として秀でていることも会社員の関心を引いている。

融資環境にも変化が

融資環境も劇的に変わっている。超低金利に、銀行の積極融資姿勢が追い風となっている。「昔は普通の会社員が5000万円以上の一棟アパートを買うことは珍しかったし、融資するほうも慎重だった」とある金融機関社員は振り返る。しかし、貸出先に悩む地方銀行や信用金庫にとって、今や不動産投資家は格好のターゲットだ。

物件の選び方も変わった。一昔前は営業マンの勧誘に従って受動的に投資用不動産を買う人が多かった。それが投資家各自で勉強し、能動的に物件を選ぶスタイルになった。「楽待」、「健美家」など、投資用不動産の専門情報サイトが普及したのはここ数年のことだ。本誌が実施した上記アンケートによると、特に女性の8割はこうしたネット主体に情報を収集する。

ただ、現在の不動産価格は上昇している。結果として、投資利回り(家賃収入÷不動産価格)、も下がっている。さくら事務所の不動産コンサルタント、長嶋修氏は「急騰しているのは都心の一部。今はバブルとはいえない」と話すが、以前より利回りのいい物件が少なくなっているのは事実だ。東京の不動産業者みまもルーム代表の渡辺よしゆき氏は「割高な物件を高い金利のローンで購入してしまい、首が回らなくなる初心者も出ている。これから参入する投資家は十分注意して物件を選ばなければならない」と指摘している。

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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