物価上昇率2%の日銀シナリオを検証する 景気・経済観測(日本)
今回の展望レポートでは、先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因として、①マクロ的な需給バランス、②中長期的な予想物価上昇率(以下、期待インフレ率)、③輸入物価、の3つを挙げている。
このうち、輸入物価については、展望レポートでは為替レート、原油価格など輸入物価を規定する経済変数の想定は明らかにされていない。今回から、「国内企業物価指数」の見通しが公表されなくなったため、為替レート、原油価格などをどのように想定しているのかがより分かりにくくなっている)。
フィリップス曲線の上昇シフトを前提としている
①、②についても直接数字が示されているわけではないが、物価と需給ギャップの関係を示すフィリップス曲線から、日銀が予測期間の需給ギャップ、期待インフレ率がどのように推移していると想定しているかを推察することが可能である。
展望レポートで示されているように、1983年以降の約30年間のフィリップス曲線を1990年代半ば(1995年10-12月期)までとそれ以降に分けてみると、需給ギャップが1%改善すると消費者物価上昇率が0.28%上昇するという関係(フィリップス曲線の傾き)は変わらないが、需給ギャップが0%(需給バランスが一致した状態)の時の消費者物価上昇率は1990年代半ばまでの1.1%に対し、それ以降は0.3%と開きがある 。この差はデフレの長期化によりフィリップス曲線が下方へシフト、期待インフレ率が低下したことを意味している。
展望レポートでは、需給ギャップの見通しが数字では示されていないが、「見通し期間中、緩やかな改善基調をたどると考えられる。そのもとで、見通し期間中の半ば頃にはマクロ的な需要超過に転じ、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される」と記述されており、実質GDP、消費者物価(除く生鮮食品)の見通しが年度ベースで示されている。
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