32歳崖っぷち女子が発見!「婚活勝利の法則」 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<11>
杏子は、そんな婚活の実情を、上手く飲み込むことが出来なかった。男女関係に於いて、「受験や就活と同じだから同時進行もアリ」なんて、とんでもないことではないか。
「そんなにショックを受けないでください。一定以上の男女が婚活を成功させたい場合は、変に恋愛感情を挟まない方が、成功率は高いんです。年収、職業、外見で条件を絞るのだって、その一環ですよ。よく言われますが、少なくとも相談所では、恋愛と結婚は別物です」
婚活成功の秘訣は、「大人」になって、割り切ること
「じゃあ、好きになってしまった場合は、どうしたらいいんですかっ?!」
杏子は、ついに声を張り上げてしまった。
「それは、正木さんに直接伝えるしかないですね。ウジウジ一人で考え込んでも、時間が勿体ないです。僕からお伝えしてもいいですよ」
「ちがいます!可能性の話をしただけです!!直人さんは、絶対に何も言わないでください!!!」
息遣い荒く、杏子は慌てて答えた。直人は、呆れたような、憐みのような表情を浮かべている。
「杏子さん……。何度も言いますが、あなたは結婚したいんですよね?結婚を目的とするなら、いちいち感情に流されて、遠回りするのはやめてください。感情に振り回されてばかりいては、いつまで経っても進展しませんよ。20代とは違うんです」
「じゃあ、どうしろって言うんですか。私、同時進行なんて尻軽女みたいな行為、したくないんですもの!」
杏子は、目頭がジワジワと熱くなるのを感じた。悲しいような苛立たしいような、投げやりな気分になっている。
「ムキにならないでくださいよ。マッチングで複数の方と会うのが、浮気行為のように思えるのは仕方ないですが、では、言い方を変えます。慣れてください。そして、大人になってください。結婚は、大人がするものです」
「私が、子供だって言いたいんですか?」
「はい、杏子さんは、まさに子供です。思ったことはすぐに態度や口に出てしまうし、男女間に於いて、一歩引いて冷静に物事を考えたり、判断することが出来ません。もう少し、大人になってください」
――大人になる……。
杏子は、ふと考えてみる。
一流大学を出て、一流企業に入社し、高収入を得ている自分は、同年代の他の人間よりも、ずっと大人の女だと、当然のように思っていた。
しかし直人は、自分を子供だと断言する。腹は立つが、そんな指摘をされたことは、今までになかった。
「少しは自覚がありましたか?それで、この桜田さまのオファーは受けますか?断りますか?彼は大学教授です。しかし、ご実家は松濤、政治家の多いご家系です。杏子さんとは、相性は悪くないと思いますけどね」
杏子はもう一度、その桜田という男の、一筆書きで描いたような顔を眺める。幸薄そうではあるが、別に不器量というわけではなかった。
「流行りの醤油顔ですね」。直人が適当な発言をしたので、杏子は軽く直人を睨んだ。
「分かりました。では、そのオファー、受けますわ」。売られた喧嘩を買うように、杏子はそう答えていた。
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