そういうと学校を先生自ら案内してくれた。急激に実績を伸ばしているというイメージからか、「教師が知識をスパルタで叩きこむ」ような、授業を勝手に想像していたが、どのクラスも活気がある。先生が板書をしているのを書き写すというスタイルの授業は少なく、どの授業も生徒と先生の双方向のスタイルだ。
そんな中、一室だけ静まり返った教室があった。中をのぞいてみると、生徒たちが一心に縫い物をしている。
前身が裁縫学校ならでは取り組み、「運針」とは
――すみません。あれは何をしているんですか?
あれは「運針」と言って、豊島岡独自の取り組みです。豊島岡の前身は裁縫学校です。ですから朝のホームルームで、授業が始まる前に5分間の運針を行っています。集中力を高めるなど、いろいろな意味がありますが、主な目的は心を落ち着けるためです。勉強が始まる前の朝の時間に、心を静めて運針に取り組む。そうして授業を始めれば、生徒たちは落ち着いた状態で授業に臨むことができます。
こうした取り組みを6年間も続けると、「一日の始まりに運針をしないと落ち着かない」という生徒もいますし、社会に出ても、何か嫌なことやトラブルがあったときに心を静めるために運針をするOGもいます。中にはセンター試験会場で運針をしているという生徒も、噂ではいるようです。
単に布を手繰って、糸を通す。簡単なことかもしれないが、生徒たちは一心不乱に取り組んでいる。とにかく、縫う。縫う。細かい縫い目で白い布にステッチを刻んでいく。
高校3年生にもなると5分間で4メートルも縫い進める生徒もいるという。時折、姿勢が歪んでいる生徒がいると先生が姿勢を正す。縫い物をしているのだが、水を打ったような静けさの中で一身に針を進める姿は、禅に取り組んでいるかのようだ。
学校案内の最中に気づいたのは、男性教師の数の多さだ。通常、女子校であれば、女性教師が大半を占めるが、豊島岡では理系進学者が多いこともあり、男性教師の数も半数以上いるという。
――女子校なのに、男性の先生が多い気がしました。
そうですね。豊島岡の生徒は理系進学者が多いので、どうしても男性が増えてしまうかもしれません。
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