井手:僕らが自己責任という時は、それはあなたの責任です、といっているのです。たとえば「タバコ吸いすぎて病気になった、自己責任です」。多くの日本人は賛成するでしょうが、タバコを何本吸ったらガンになるかは誰にもわかりません。200本が境界で201本吸ったからガンになったといえば自己責任ですが、何本かわからないのに「自己責任」では意味がわかりません。
貧乏な人に「努力しなかったから」とか、「怠けたから自己責任でしょ」といいますが、家が貧しかったから努力できなかったのかもしれない。頭が悪かった、あるいは運が悪かったのかもしれません。病気だって遺伝かもしれない。何が理由かわからないけど、なんでこの人は困っているのか、その理由をきちんと考えようとしないで、自己責任で終わらせてしまう。
木本:それが先生のいう「自己責任の罠」なんですね。
「無関心」「責任回避」の社会を終わらせたい
井手:「知らんがな」で切り捨てれば、それで終えられますから。でもそれが社会の事柄であれば「無関心」ですよね。つまり、責任回避です。自分が責任を取りたくない、誰かのための責任を持ってやろうという温かみはすごく大事ですし、電車だってお互いが注意し合いながら自然とマナー違反の行為がなくなるのがよいはずですが、禁止事項を並べて窮屈すぎる社会になっている。
トマトジュースを飲むと、上部に高リコピントマト使用と書いてあり、下には高リコピントマトの使用率は10%ですとある。ここまで説明しないといけない。飲料ひとつとっても釈明が多すぎます、この国は。ヨーロッパのタバコのパッケージにも「これを吸ったら死ぬ」と書いてありますが(笑)。日本は細かすぎる。
木本:説明も年々細かくなっていますね。
井手:トクホ(特定保健用食品)だって、脂肪の吸収を抑えるとか、いろいろ書いてあってどれを選んでいいかわかりません。本当はおいしい飲み物が良い飲み物なのに(笑)最近は味で選んで炭酸系のものしか飲みませんが、もう書きすぎです。全部突っ込まれた時の備えですよね。
木本:「ちゃんと書いていますから」とね。エスカレーターも一緒。安全のために「手すりを持つように」「歩かないように」「黄色い線を踏まないように」などといろいろ書いていますが、それを読みながら上っていったら逆に事故が起こる(笑)。
井手:こういうやり方の果てに人は他者に無関心になっていきます。本当にその人が幸せになる方法を考える前に、責任回避の言い訳がくる。
木本:お笑いのたとえばっかりで申し訳ないのですが、トップにおられる方はそんな受け方は絶対しませんね。絶対に広げてくれますし、受けますね。だから「知らんがな」とツッコミをする人は大御所にはいません。それで、僕も「知らんがな」はやめとこと思って勉強してます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら