2006年、ユニリーバはこれをさらに発展させた「Self-esteem (自尊心)」キャンペーンを開始。スペシャルサイト上に美の再発見と人々の自尊心を大切に育むための意見交換の場を作り、また基金を作って特に子供たちへ向けて「自分に自信を持とう」というメッセージを発していきます。
ナイキのキャンペーンは短命に終わりましたが、Doveのキャンペーンは社会的運動論としていまだに続いています。伝統的な美の定義から女性たちを解放し、自分独自の美しさを肯定的にとらえようと提唱するメッセージは、Doveブランドの核心的価値観として定着し、それはもちろん消費者の好感を獲得することで商品の売り上げに結び付いたわけですが、そんな小さなことは超越してDoveブランドと消費者の価値観が共振し、その結果、「Doveが世の中に存在したほうがよい大きな理由」ができたことが、ユニリーバにとっての最大の報酬です。
日本にもあるムーブメント型キャンペーン
日本にも古くから「モーレツからビューティフルへ」「ディスカバー・ジャパン」など、広告の枠を突き抜けて時代の流れと共鳴した骨太でスケールの大きなキャンペーンの事例がありました。最近の例で言えば、トヨタの車種ブランド「アクア」が展開した「Aqua Social Fes !!」というキャンペーンが秀逸です。
アクアという新商品を売るための仕掛けは、伝統的な広告メディアに載せた商業的メッセージをベースとしながらも、ブランドとターゲット消費者の一体感を醸成する目的で、全国で展開するコミュニティの環境保護活動を重視していました。
商品の説明をしないで商品を売る。ブランドの価値観や世界観を共有してもらうことにより、ファンを増やしていく。「こんなことで商品が売れるのか」という疑問には、アクア市場導入後の販売台数が最良の回答となるでしょう。もちろん商品自体が十分に魅力的で競争力があることが前提ですが、商品ベネフィットの伝達よりも、商品が持つ社会性とブランドに込められた価値観を、参加型イベントを通して人々と共有することに重点を置く新しいコミュニケーションの方法論は、刮目に値すると思います。
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