三越銀座店、鳴り物入り免税店の悲しい現状 中国人店員の接客に不満の声も

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接客面での不満もある。年に数回日本を観光するというある20代の中国人女性はこう語る。「せっかく日本に来たのに、免税店にいるのは中国人の店員ばかり。接客のレベルも日本人に比べると低く、雑な扱いを受けたことがある」「地方の小さなお土産屋さんで、中国語の通じない店員さんと話した方がずっと楽しい」。三越銀座店を含め、都心の大型百貨店では訪日客への対応策として、外国語を話せるスタッフの雇用を増やしているが、良かれと思ってしたことが、かえって裏目に出てしまっているのだ。

昨年8月の三越銀座店の様子。わずか1年で状況は様変わりした(記者撮影)

こうした状況を受けて、店舗側も手を打っていないわけではない。「中国現地の代理店にアプローチしたり、売れ筋のお菓子を新たに導入したりしている」(日本空港ビルデング)。

加えて、目立ったのは日本語の看板だ。「どなたでもご自由にご覧いただけます」――。銀座通り沿いの入り口に掲げられた免税店の広告には、大きな文字で日本語が書かれていた。

実は、空港型免税店は出国1カ月以内の日本人も利用が可能で、当初計画では4割程度を占めると予想していた。しかし実際は、1割ほどと想定以上に利用者が少なかった。そこで、「日本人にもっと知って欲しい」と、周知を強化しているという。とはいえ、これから出国しようとする日本人にとって、免税店での買い物を空港で荷物として受け取ることがどれだけ魅力があるについては疑問が残る。

2店目を新宿にオープンか

こうした厳しい状況にも関わらず、会社側は当初から構想していた2店目の出店を諦めていない。今年1月の銀座店開店当初は、「今年度中に伊勢丹新宿店の周辺に2店目を開業したい」(三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長)と発表していたものの、「今年度に出店するという動きは把握していない」(三越伊勢丹)、と一時はトーンダウン。

やはり取りやめたのかと思いきや、「来年の4月中には新宿店近くの「パークシティ」(駐車場などがある施設)に免税店を開業する予定だと聞いている」(百貨店業界関係者)ともっぱらのうわさなのだ。

小売店に詳しいフロンティア・マネジメント代表の松岡真宏氏は、百貨店が訪日客のモノ消費に依存しすぎていることに警鐘を鳴らす。「百貨店での爆買いは終了したといわれているが、むしろこれからが勝負だ。日本人よりも速いスピードで、中国人はモノからコト消費へ移っていく。百貨店は、外商事業などの中で、良い旅行先や旅館を沢山知っているのだから、それを活用しない手はない。日本の人口が減っていく中で、もう終わったものにせずにしっかりとした市場に育てていかなくてはいけない」(松岡氏)。

現在、日本を訪れる訪日観光客の数は増加し続けている。直近の8月でも、前年同期比を13%も上回る204万人がやってきた。百貨店の国内消費が低迷する今こそ、かれらの購買力を百貨店が取り込むための方策を、今一度抜本的に考え直す時期に来ている。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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