現地採用で働く若者たちは皆、「日本で働いているときより金銭的に楽になった」と言っており、日々の生活で大きく困ることはないとのことです。
格安航空会社をはじめ、多くの航空会社が連日日本への便を飛ばしており、航空運賃の安いときには3万円以下で日本に帰ることもできますので、飛行機代がなくて日本に帰れない、なんてこともなさそうです。現に、長期休暇を取って、年に1~2回里帰りしているという人がほとんどです。
日本企業独自の文化を理解している人材が必要
なぜ、このような好待遇になるのか?
その理由は大きく2つあります。
ひとつ目は、「アジア経済の発展」です。東南アジア諸国のGDPの伸び率は年間4~10%程度のところが多く、世界で最も経済成長している国が多い地域です。
そして、日本から地理的に近く、2012年以降、中国のリスクが顕在化したこともあり、多くの日本企業が次々とこの地域に進出しています。それに伴って、多くの日本人従業員が必要となり、その一部が現地採用というかたちで雇用されています。
現地採用の志望者は以前より増えたとはいえ、十二分にいるわけではなく、特に若い人やスキルのある人は希少ですので、国によっては求人数が求職者数を上回っており、待遇がよくなっているのです。
そして、もうひとつの理由が「日本企業の特殊性」です。
現地で会社を運営するにあたり、「なぜ日本人が必要なのか?」という問題があります。
たとえば、日本にある欧米企業の多くは、日本人だけで経営されており、アメリカ人社員は非常に少数です。私(森山)が在籍していたアメリカ企業の日本法人の社員は99%以上日本人でした。
同様に、インドネシアにある日系企業をインドネシア人だけで経営することはできないのでしょうか?
実際に、1~2人の日本人とその他大勢の現地人で回している会社も多く存在しています。しかし、多くの日系企業では、10人程度の日本人と100~200人程度の現地人といった割合になっています。
日本企業にはさまざまな独自の文化があります。
「ビールをつぐときはラベルを上に」的な体育会的接待文化や、ひとつの承認を得るのに会議が5回必要となるような多会議根回し文化、異常な労働時間を強いる超長時間労働文化などです。これらの文化はなかなか外国人に理解してもらうことができず、本社と同一の文化で現地法人を運営していくために、多くの日本人が必要となるのです。
また、本社に英語や現地語をしゃべれる人が少ないため、現地に日本語ができる人を置いて、彼らを通してコミュニケーションをとりたいという希望もあります。
純粋に通訳というわけではなく、日本企業文化を、言葉の面でも業務の面でも現地に伝える職務。これが、多くの日本人現地採用者が遂行する業務です。
そのため、日本の企業文化に理解のある人材が求められており、新卒の需要はさほど多くありません(また、新卒ではビザが下りない国も多々あります)。日本企業文化の基礎を理解し、変化対応力もある、入社2~10年目程度の人材がいちばん需要があるのです。