発達障害者のキャリア計画、どう描くべきか アルバイトから正社員という道はある?

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学校ではありませんから、会社に入ったらまったりしていいわけでは決してありません。会社とは教育機関でも(多くの場合は)慈善事業でもありませんから、会社に入ったら、一労働者として今まで以上に努力して、個人としてのスキルと経験を磨き、具体的アウトプットを通じて貢献することを考えないといけないのです。給与をもらっている以上は、会社とはインプット(学び)の場ではなく、アウトプットの場ですから当然です。

ところが前述のとおり、正社員というステータスになぜか安住し、武器を磨く努力を怠る人が多いのが事実です。さて、そう考えますと雇用の形態はいかようであれ、業務の内容によっては成長可能性は大きく異なることがご理解いただけるかと思います。

したがって成瀬さんとしても、正社員を選ぶかアルバイトを選ぶかという2軸での検討は無意味です。あくまでもどんな業務をこなすか、どこまでできるか、そしてその業務や仕事は成瀬さんの興味や方向性と合致するものか否か、という軸で検討されるほうがいいでしょう。

実績を出す必要がある

ただし、アルバイトという形態を選択される場合は、やはり多くのケースでは、前述のとおり転職時に一般的なアルバイト基準で評価されますから、その後への備えが非常に重要であることは確かです。

その後、正社員を狙われるのであれば、そのときの勤務先で正社員に登用されるという道がいちばん可能性が高いと判断をするべきでしょう。ですから、繰り返しですがそのような判断をされる際には、そういった前例や制度、カルチャーがあるのかの見極めに加えて、成瀬さんとしても実績を出すことにコミットする必要があります。いずれにしましても、正社員かアルバイトかの比較は本質的には無意味です。

もっと言うと、キャリアとは人生の一部でしかありませんから、成瀬さんとして今後どういった人生を歩んでいきたいのか、今はキャリアを考えるうえでどんなステージにいるのか、そして次のキャリアに何を求めるべきなのか、さらにはそのさらに次に何を狙うのか、そういったことを包括的に考えたうえで判断をされるべきです。

いただいた文章ではご年齢も今までのキャリアもわかりかねますが、どんな意思決定であれ簡単な表面上の2軸(正社員かアルバイトか)ではなく、本質的な軸(業務内容や今後のキャリア上の発展性)で検討をされるべきです。

判断軸を誤り意思決定をされると、結果は芳しくないものとなってしまいます。成瀬さんが、ご自身の現在と将来を見据え、合理的な軸で人生の判断を下されることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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