学生結婚で親になった、あるカップルの"選択" カップルが愛情と敬意を注ぐもの

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渡航前は第二子・第三子と一緒に語学の自主レッスンを企画し「トイレに行きたいのですが」などの言葉を練習した。渡航して1年がたった。外国語の学習や異文化での生活には困難もあったが、3人で助け合い、時にケンカもしながら元気に過ごしている。急な生活環境の変化に戸惑いがあっても、その変化を楽しめるのは3人一緒だから、かもしれない。

ここまで来るのは、当然、ラクではなかった。第一子が1歳の時、父親の正夫さんは大学4年生。当時住んでいた街から大学まで、エレベーターのない駅も多い中、「自宅から電車に乗って保育園に子どもを送り、大学に着くまで、電車を5本乗り継ぎました」(正夫さん)。

時はイクメンブームより前。パパ友は「いなかった」し、「ベビーカーに荷物を積んでスリングで子どもを抱いて。大変だから車で……とも思いましたが、今度は渋滞に巻き込まれました」と振り返る。ただ、その口調に愚痴っぽさは感じられず、至って淡々としている。

「夫は口に出さないけれど、ずいぶん頑張ったと思います」と佳恵さん。こちらも現在のようにワーキングマザー応援の雰囲気がなかった頃。「家電を活用したり、シッターさんをお願いしたり、できることは何でもしました」。

出産時期によっては、年度途中で保育園を探すこともあった。認可保育園には入れず、大きな出費に苦労した時期もある。家計がきつくなったら「乳飲み子を抱えて家庭教師や塾講師もしました」と佳恵さんは振り返る。高い保育料は期間限定。長期的な視点でキャリアを考えれば、苦労は一時的なものと考えた。

夫はどう考えていたのか

一方、 学生結婚で3人もの子どもを抱え、さらに妻の海外赴任に伴い一緒に海外に渡った正夫さん。そのキャリアと生活はどうだったのだろうか。

正夫さんの就職活動は2人目の子どもが生まれる日と重なっていたという。

入社した会社の仕事は、仕事柄、暗くなってからの業務も多い。終電で帰れず、始発で帰宅することも少なくなかったが、保育園の送りを欠かしたことはない。

大変だから代わってほしい、とは一度も言わなかったし、妻の佳恵さんも代わろうか、とは言わなかった。お互い、好きなことを仕事にすることをあきらめず、また、家庭責任を果たすのも当たり前と考えた。

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