国産旅客機「MRJ」によぎる5度目の納入遅延 三菱重工の"慎重姿勢"は受注の不安材料に
100席未満を中心とするリージョナルジェット旅客機市場には4社が参入している。世界的に販売実績があるのはエンブラエル(ブラジル)、ボンバルディア(カナダ)の2社だが、ボンバルディアは主力機の客室が狭く、最近は受注が細っている。最大のライバルとなるのは累計受注1400機超のベストセラー「Eジェット」を擁するエンブラエルだ。
MRJはEジェットより2割以上優れた燃費性能を強みに受注活動を行ってきた。一方のエンブラエルは、MRJと同じエンジンを採用した、改良型機「E2」を開発。燃費性能の差を、機体の空気抵抗による差ぐらいの数%にまで、追い上げてきている。
E2シリーズのうち、MRJと同サイズの「175-E2」(80〜88席)は、2020年の納入開始予定。MRJのそれは2018年半ばと、依然として2年程度先行するが、これも5度目の開発日程遅延がなければの話だ。MRJの現時点の受注残は、全日本空輸や日本航空、米航空会社などからの確定・仮予約分で計403機。当面の目標とする1000機までの道のりは遠い。
過酷な試験が始まる
Eジェットを運航する航空会社からは「一般論として(E2など)改良型機への移行のほうが社内システムやパイロット訓練などさまざまな面でスムーズ。MRJの導入も検討対象だが、商業運航前なので性能などを測りかねる部分がある」(フジドリームエアラインズ)との声が聞かれる。まず、定期便として飛ぶ姿を披露しなければ、MRJの大量受注は難しい。
納入開始時期が迫る中、MRJ開発は最大の難関、「型式証明」の取得が控える。型式証明とは、国土交通省が審査・承認する機体の設計安全認証のことで、機体強度や飛行性能など約400項目の基準をクリアする必要がある。取得に向け2500時間に及ぶ飛行試験が計画されているが、まだ150時間程度実施したにすぎない。今後は厳寒や強風など特殊条件下での過酷な試験が待ち受ける。
「航空機の開発は、ソフトウエアと同様、バグを潰す作業」(航空評論家の青木謙知氏)。不具合の発生はつきものだ。だが、半世紀ぶりの国産旅客機とはいえ、自ら設定した開発日程の遅延をさらに繰り返せば、見込み客の航空各社をはじめ周囲からの視線は冷ややかなものになる。
安全性第一は当然だが、万全の基準が高すぎると、ビジネスとしては成り立たない。産みの本当の苦しみはこれからなのかもしれない。
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