VRに酔った!「バイオハザード7」の超破壊力 ゲーム専用機が再び業界を席巻する?

拡大
縮小

今作はゲーム全編がVR機器に対応しているが、これは開発当初には決まっていなかったという。転機となったのが、2015年6月に米国で行われたゲームイベントのE3で出展した、「Kitchen」という技術デモである。縛られているプレーヤーに、ゾンビが襲い掛かってくるというVR体験を紹介したところ、好評を博した。反響を受けて急遽、バイオハザード7のVR完全対応が決まったほどだ。

ただし、新市場のVRだけに、課題もなくはない。VR特有の”VR酔い”の存在もその一つである。

VR酔いよりもゲーム自体の面白さを強調する辻本春弘社長

VRでは、ゲーム画面での身体の動きと実際の身体の動きが違うことから、乗り物酔いのような症状が出ることがある。今年のE3で行ったデモイベントでは、約15%のプレーヤーが酔いを感じていたという。それを受けた今回の展示では、コントローラーによる視点移動を30度ごとに区切るなど、細かい調整を実施することでVR酔いを抑えた。辻本社長は「VRの構造上、酔いの問題は完全にはなくならないが、普及の妨げになるレベルではない。ゲームそのものの面白さが重要になる」と語る。

ソニーPSVRの普及も焦点に

カプコンは今後、バイオハザード7で培ったノウハウを活かし、VR展開を行っていくという。その際、カギになってきそうなのが、海外展開だ。現在、PS史上最速のペースで普及が進んでいるPS4だが、主に売れているのは欧米であり、日本での普及は途上。PSVRを動かすにはPS4が必要になるが、こちらも海外の方が普及する環境が整っている。他のVR機器も同様で、高額なゲーミングPCが必要なOculus Rift、動き回る空間が必要となるHTC Viveも、海外が先行することになりそうだ。

ソフトメーカー側もこうした状況を踏まえた開発が必要だろう。VRタイトルで大ヒットを狙うには、国内のみを対象とするのではなく、海外で通用するタイトルを作っていくことが求められる。その点、バイオハザードは、海外での知名度が非常に高い。今作がどう受け止められるかが、今後のソフト開発における試金石になりそうだ。

ここ数年、スマホゲームが席巻していたゲーム業界だが、VRの登場によって、ゲーム専用機でも新たな潮流が生まれてきた。バイオハザードという最大の切り札を早々に切ったカプコンは、いち早くこの流れに乗ることができるのか。 

(撮影:風間仁一郎)

渡辺 拓未 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT