「物価はどうでもいい」などと、私のように乱暴に言うか、立場上丁寧で謙虚な態度をとるか、の違いであって、私と日銀執行部の間には、それほど見方の差も、あるべき金融政策についての意見の違いもないと、(私は)見ている。
意見の違いは、現状の緩和を続けることによる、リスクとコストの大きさの判断の違いである。日銀はこれを過小評価していると思うが、9月の黒田、中曾講演を聞く限り、やっと本心を言えるようになってきた、リスクとコストはある、という認識は共有しているので、ここでも違いはほとんどないといえるだろう。
だから、追加緩和は次、という議論は間違いで、日銀も追加緩和の必要性を感じていないのだ。
理屈からいっても、現実的な状況からいっても、追加緩和をする理由はない。だから、先送りではなく、追加緩和は未来永劫する必要はないのだ。
しかし、それでも追加緩和をするのである。
その理由は、市場の反動が怖いからで、これに対して、どこまでビビるか。それが、日銀の最大の問題だ。明日、明後日の日銀の政策決定会合は、日銀が市場に対して、どこまでビビるかにかかっている。ビビらなければ、追加緩和は何もなし。未来永劫なしだ。
日銀はビビっている
しかし、彼らはビビっている。
まず、国内預金取り扱い金融機関に対してビビっている。要は銀行対策だ。銀行を敵にするのは怖い。銀行は最も直接的な相手であり、最も直接関係があるだけでなく、実体的にも、日銀がもっとも守るべき経済主体だ。だから、銀行にマイナスになることはあまりできない。よってマイナス金利の深堀りはやりにくい、ということになる。
しかし、一方で、それ以外の手段がない。理論的には、量的緩和よりもはるかにまともな金融緩和策であり、金利引き下げに直接アプローチする。だから、何か追加緩和をするとすれば、これ以外にはない。
では、銀行への悪影響をどう緩和するか。
前回は、「三層構造で工夫をしています」、と主張したが、効果はなかったというより、全く無視された。なぜなら、銀行から利子をとる、というマイナス金利の直接的な銀行負担は生じなくとも、実質的に銀行、とりわけ地域金融機関を追い詰めたからだ。
それは長期金利の大幅低下、10年物の国債金利がマイナスに落ち込んだからだ。これでは、長短金利差で利鞘を稼ぐだけしかない地域金融機関は赤字になってしまう。預金金利はマイナスにならないから、事務経費と運用損で赤字は必然だ。銀行からの批判に対処するためには、長期金利の下げすぎを緩和しなくてはならない。
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