「お得なきっぷ」にJR間の連携不足が表面化 民営化30年、グループの協力は縮小傾向?

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JR東日本が今夏から小田原~伊豆急下田間で運転を開始したリゾート列車「伊豆クレイル」(撮影:尾形文繋)

分割民営化の影響やJR間の連携不足が表れている点としては、主に以下の3つを挙げることができる。

1つ目は、2004年10月16日のダイヤ改正時に、東海道本線熱海駅を越えて湯河原方面と函南方面を直通する列車が53本から20本へと大幅に削減されたことが挙げられる。同時に、東海道本線二宮方面と御殿場線の直通列車も6本から2本へ削減され、2012年3月17日には最後まで残っていた両線直通列車1本と、JR東日本車両による御殿場線内折り返し運用列車も廃止されるに至った。

これらの動きは、首都圏を中心に私鉄線では他社線との相互直通運転が拡大する傾向にあるのとは対照的である。今年3月26日に行われたダイヤ改正では、JR東日本の常磐線車両の小田急線乗り入れが開始されている。JR同士の乗り入れ縮小の傾向とは、あまりにも対照的な出来事ではないだろうか。

2つ目に、熱海駅~函南駅および国府津駅~御殿場駅をまたがるIC乗車券の利用ができないことである。JR東日本エリアとJR東海エリアをまたがって利用可能とするためには、多額のプログラム改修費用がかかることが想定されるが、両エリアをまたがる利用による増収が改修費用を超えるほどには見込めないことが現在も利用不可である理由であると考えられる。

3つ目に、JR東日本の「えきねっと」で予約したきっぷはJR東日本エリアの他、JR北海道青森・函館エリアおよびJR西日本北陸エリアでの受け取りが可能であるが、JR東海では受けとることができない。一方、東海道・山陽新幹線の会員制予約サービスである「エクスプレス予約」では、JR東海およびJR西日本の駅で受け取ることが可能(JR四国高松駅でも受け取り可能)であるが、JR東日本の駅では受けとることができない。JR東日本の都内主要駅の窓口には、「エクスプレス予約は受け取ることができない」旨の案内が掲示されていることが多い。

JR30周年を機に連携の強化を

2016年7月16日、小田原駅~伊豆急下田駅で、JR東日本はリゾート列車「伊豆クレイル」の運転を開始したが、JR東日本が誘客のために選んだパートナーは、小田急電鉄の特急ロマンスカーであった。東京駅・品川駅・新横浜駅から小田原駅まではJR東海の東海道新幹線という選択肢もあるが、JR東海との表立ったタイアップは行われていない。

国鉄分割民営化から2017年4月1日で満30年を迎えるのを前に、10月25・26日、九州旅客鉄道(JR九州)が東京と福岡の両証券取引所に上場する。JR各社は30周年を機に、会社間の直通列車の復活や増発、JRグループの共通予約サイトなど利便性向上の施策を推進してほしい。

30年前と比べると、格安航空(LCC)や高速バス、さらには高速道路網の整備に伴うマイカーの利便性向上など、消費者にとっては鉄道以外の移動の選択肢は確実に増えた。JRグループが目指すべきなのは、鉄道を選んでもらえる魅力作りであり、そのために今必要なのはJRグループ各社が連携を強化することではないだろうか。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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