ファンドバブル崩壊−−逆回転する不動産ファイナンス
今3月末に関して、ファンド関係者は「物件が売却できず、NRLも“ジャンプ”が相次いだ」と話す。期限前売却→早期回収→新規融資という好循環がストップし、回転が利かず新規融資は限定的になった。公示地価を振り返るまでもなく、地価動向には不透明感が漂うが、これは不動産融資の逆回転も要因だ。
相対的割安感は続くか? 濃霧の不動産市場
捨てる神あれば、一方で拾う神もいる。不動産NRLの先駆として05年3月末に9688億円の残高を積み上げ、以後、慎重姿勢に転じた中央三井信託銀行。同行は再び残高拡大にアクセルを踏み始めている。「2~3年前に慎重姿勢になったのは、過当競争でペイしなかったから。リスクに見合うスプレッドが取れなかった。最近では(拡大を図った)最初のときの条件に戻ってきているので選別して取り組み始めている」(田辺和夫社長)という。
邦銀全体から野放図な姿勢は消えたが、それはリスクに見合うスプレッド、適正なLTVを確保できれば一定水準の資金量は供給することでもある。外銀を含めた不動産関連ローンの規模縮小は避けられないが、「よい意味で不動産金融マーケットに冷静さを取り戻させる」(不動産ファンド関係者)ことにもなりうる。
だが、懸念は残る。不動産ファンド首脳は「不動産はもはや金融商品であり、バブル崩壊前後のように一本調子で上がり続けたり、下げ続けることはない。他金融商品や欧米不動産市場との比較の中で、割高なら売られ、割安なら買いが入る」とする。昨年までの不動産市場の活況を支えたのはデット、エクイティ両面での潤沢なマネーフローだ。背景には国内の歴史的な低金利と円安、欧米市場と比べた割安感がある。
サブプライム禍を脱せずリセッションが取りざたされる米欧では、政策金利のベクトルは引き下げだろう。米住宅価格低下の商業不動産への波及の可能性もある。今後、金利差の縮小と各国不動産価格の低下により、国内不動産の相対的な割安感は薄まらざるをえまい。海外エクイティマネーの積極投資が頼みの綱だが、これも持続的なものだろうか。日本株は外国人投資家から見放された状況が続くが、その中で不動産のみ海外資金を呼び込み続けることが可能だろうか。視界不良の国内不動産市場。不動産証券化市場を包み込む濃霧はまだ晴れそうにない。
(金融ビジネス編集部)
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