ファンドバブル崩壊−−逆回転する不動産ファイナンス

拡大
縮小

CMBS(商業用不動産ローン担保証券)発行市場では、相変わらずの怒濤の発行が続いている。今年1~3月は当初、発行金額が少なく、1000億円に達しないと思われたが、3月に駆け込み発行が相次いだ。年度末に向け、リーマン・ブラザース証券が2件577億円を発行。国内勢でもオリックスが1件230億円強を発行した。また、1~3月にモルガン・スタンレー証券が2件500億円強、みずほ証券1件250億円などがあり、狭義では含まれないが、証券化前のローン売却もゴールドマン・サックスと見られる900億円など2000億円弱あり、これを含め4000億円弱になったようだ。

公表資料分によれば2007年1~3月は7件、1756億円だ。外資系各社の縮小が相次ぎ、関係者が「この先、もう国内ではCMBSでは商売できない可能性もある」と嘆く中で、大量発行が続いている。

CMBS市場の変調は変わることがない。07年の国内のCMBSの発行額は、格付け会社のフィッチ・レーティングスでは1月公表リポートで「少なくとも総額約2・3兆円、48件」の発行があり、前年比60%増になったとしている。ちなみに個別公表ベースの合算は、39件、1・8兆円。案件ごとのオリジネーターから推測するとモルガン・スタンレーの7件4366億円(他に1億2490万ユーロ)を筆頭に、ベアー・スターンズ証券の3件2318億円、クレディ・スイス証券の3件1309億円、メリルリンチ日本証券の2件1038億円などが続いている。


CMBS投げ売りの裏に未消化在庫滞留説も

サブプライム問題顕在化以降、シングルAやトリプルBなどのトランシェでは発行時のスプレッドが50~100bp程度、投資不適格ゾーンでは100~200bpワイド化してきた。06年から本格参入、CMBS大量発行の消化をサポートした海外ファンド勢は「8月に完全に死んだ」(外資系証券)。さらに国内投資家も高水準の利回りを求め始めた。

サブプライム問題で自己資本が毀損した外資系投資銀行は、日本国内でもアセット縮小へ不動産ノンリコースローン(NRL)の新規貸し出しを急縮小し、手持ちのNRL在庫を9月以降、CMBSとして大量に市場に吐き出した。昨年9~12月の外資(含む新生銀)の発行は判明分だけで16件、1兆0860億円に及ぶ。

一方、CMBSを購入する主要な国内投資家には生損保等とともにメガバンク、地銀も含まれる。金融庁は邦銀の不動産融資の精査の厳格化とともに、保有する証券化商品に関してもリスク把握の厳正化を促している。サブプライム危機以降、この姿勢は強まり、CMBSならば裏付け資産の担保不動産一件一件の把握まで必要になっているという。CMBS1件には通常10~20棟程度の物件が組み込まれ、これを精査する作業は極めて煩雑だ。事実上、CMBS投資を凍結したケースもある。

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