ハーバード大生が毎年「東北」で学習する理由 復興の地でしか得られない学びとは

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その裏には、HBSに限らず、世界から見て日本はもう、ぜひ行きたい、学んでみたいという対象ではなくなっている現実があるんです。新興国は、変化の渦を自分の目で見てみたいと先生も学生も行きたがる。私たちとしては、ぜひ日本のよさを知ってほしいという純然たる思いがあって、みんなで頑張って働きかける。

強い思いが事業を導く

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──ただ実際の東北滞在はたった1週間。その短さを超越した濃密さのようなものがあるのですか。

震災以降、東北にはよそにはない面白い動きが起こっていて、純粋に地域のため社会のために事業を起こすという起業家が、地域内で同時多発的に生まれている。交通の便は悪く人も少ない。教科書的には起業環境として最悪なのに、そこですばらしいものや結果が生まれ、人を集めていたりする。地域への思いを基にした事業のあり方やリーダーの姿から、学生にとっての常識であるoutside‐in(外部環境を分析したうえで戦略を立てる)と逆のinside‐out(強い思いが事業を導く)が東北では実際に起こってるんですね。

──学生にとっては人生におけるインパクト大な1週間でしょうね。

そういう感想がまず出ますね。自分の生き方を考え直すことにつながった、とも。HBSでも社会的理念を持った企業やNPOのことも当然勉強はしますが、紙で読んで議論するのと、リアルな姿に立ち会うのとではインパクトが違う。東北の事業はまだ初期段階で生々しさとかドタバタ感とか、微妙な地元との軋轢とかを目撃する。横から汗が飛んでくるくらいの距離で時間を共にする体験は得がたいですよね。

──繭加さんの中でいちばん印象に残った思い出は何ですか。

宮城県女川町で中学生たちが主導した「いのちの石碑」というプロジェクトの発表を聞いたときでした。今回の津波の高さの地点に石碑を建てて、1000年後、次の津波が来たとき「この石碑よりも上へ逃げてください」というメッセージとともに町のあらゆる箇所に石碑を置きました。そのプレゼンを聞く学生たちの真剣度というか、中学生が町の未来を思いこれだけのことをしているという畏敬の念というか、感動があった。涙する人も出てきて、最後はみんな立ち上がって拍手が鳴りやまなかった。中学生たちは新たな自信と大きなターニングポイントを得たような表情を浮かべ、その一方には感動するHBSの学生がいる。HBSと東北の双方が大きなものを得る、そんな奇跡を創るプログラム。やってきて本当によかったと思いました。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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