電機産業はもはや円安だけでは挽回できない 業界利益水準は1970年代並み、なのに株価は4割上昇

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円安が続いても利益が増える保証なし

では、円安によって将来の利益が増えるのだろうか? 原理的には、いくつかのルートが考えられる。

第一は、円安によって輸入品が割高になって国産品が有利になり、国内販売が増加するルートだ。例えば、サムスン電子がウォン建て価格を変えなければ、円建て価格は上がる。それを日本国内の販売価格に転嫁すれば、日本市場で競争力が落ちて、販売量が減る。

では、輸入価格は上昇しているか? 貿易統計において、数量が分かる項目(電算機類、IC、映像記録・再生機器など)について、単位数量あたりの輸入価格の推移を見ると、過去1年間程度の期間で、変動はあるものの、傾向的な動きは見られない。したがって、円安で国産品の価格競争力が高まるという現象は、起きていないわけだ。実際には、例えばサムスンがウォン建て価格を引き下げ、円建て価格を一定に保っているのだと考えられる。

テレビやPCなどの輸入品は、荷揚げの段階で価格が上昇しておらず、末端価格も動いていない。実際、韓国製テレビや台湾製PCの価格が上昇しているという話は聞かない。そうであれば、日本国内で外国製品のシェアが落ちることはない。

第二のルートは、輸出を通じるものだ。例えば、日本メーカーが円建て価格を一定に保てば、アメリカの市場でドル建て価格が下がる。そうすれば、サムスンなどに対する競争力が増して、販売量が増える。

しかし、末端価格を変えるには時間がかかるし、「円安による輸出ドライブ」と批判されるおそれもある。また、需要の価格弾力性が低ければ、ドル建ての販売額は減る。だから、末端でのドル建て価格は一定に保たれていると考えられる。

つまり、自動車や電機製品のように価格競争が激しい商品では、為替レートが変わっても、末端価格は変わらない可能性が高い。したがって、円安が今後も続くとしても、それによって外国製品の輸入量が減ったり、日本製品の輸出量が増えたりすることはないと考えられる。

為替レートの変化は、メーカーや流通業者の利益の増減で調整されてしまう。ただし、円安による利益が日本メーカーの手に落ちるのか、それとも流通業者の手に落ちるのかは定かではない。結局、円安で日本の電機メーカーの利益が増大するか否かには、大きな不確実性があると言わざるを得ない。以上を考えると、現在の株取引は、収益が目的でなく、短期的な売買益確保を目的としたものが中心だと考えられる。

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