企業の業績を評価するには営業利益を見るべきと、前回述べた。では、営業利益の実態はどうなっているだろうか?
法人企業統計(金融保険業を除く)の全産業について、2008年4~6月期と12年10~12月期とを比較すると、売上高は358兆円から320兆円へと10.4%減少し、営業利益は12.4兆円から10.6兆円へと14.7%減少している。
こうした変化がなぜ生じたかを分析するために、「売上高営業利益率」という概念を導入しよう(以下では、これを「利益率」と呼ぶ)。これは、売上高に対する営業利益の比率である。したがって、営業利益は、売上高と利益率の積で表される。
営業利益をこの二つに分解するのは、各々を変動させる要因が違うからだ。だから、現在の状況を評価するにも、今後の見通しを考えるにも、こうした分解を行うのが有用だ。
売上高は、国内の景気循環に左右される。また、輸出相手国の景気の影響も受ける。実際、08年秋のリーマンショックによって、輸出が急減し、売上高も急減した。12年4~6月期以降も、輸出が落ち込んでいるため、売上高が減少している。為替レートも、輸出を通じて売上高に影響を与える。03年頃からの円安によって輸出が増大したため、売上高も07年の末あたりまでは増加を続けた。
それに対して、利益率は、構造的な要因に影響される場合が多い。これは、とくに製造業において顕著である。図に示すように、利益率はリーマンショック後急激に低下し、東日本大震災後にも低下した(10年10~12月期が3.9%、11年1~3月期が2.9%)。
利益率も為替レートによって影響を受ける。輸出産業の場合、円安になれば、円建ての収入が増えるので、利益率が上がる。組み立て産業の場合には、これがとくに顕著だ。製造業の利益率が経済危機前に高かったのは、この要因によるところが大きい。ただし、素材産業の場合は、円安によって原材料価格も上昇するので、円安で利益率が上昇するとは限らない。
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