初対面でも話を引き出すNHKアナの秘密 相手の本音は「5秒の沈黙」で引き出せる

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NHKのアナウンス室長を務め、『なるほど経済』『世界体感生中継』などの番組を担当してきた渡部英美アナウンサーは、こう言います。

「相手が言おうとしている言葉を探すのが、アナウンサーの役割です。私はインタビューリスニングといって、深層心理の研究をしているのですが、人が言いたいと思っている結論にたどり着くには、9〜10のもやもやとしたものがあるとされています。そのもやもやを相手と一緒に取り除き、結論を探してあげることが大切です」

相手が言いたいことを引き出す会話例

たとえば、夫が妻に向かって、「ああ、疲れた」と言ったとします。このとき、夫の言いたいことを引き出すには、妻はなんと声をかければよいでしょうか。

「なんで?」と聞きたくなるかもしれません。しかし、「なんで?」という言葉には聞き手の価値観が入り込んでいます。「なんで、疲れているの? この間も休んだじゃないの。ほかの人はもっと働いているわ」。聞き手にこのような意図はなくても、相手はそう受け取る可能性があります。

あるいは、「何があったの?」「どれくらい休んでないの?」といった言葉をかけたくなるかもしれません。しかし、こうしたリアクションをすると、「何が原因で疲れているのか」「休みが十分にとれていない」という話になってしまいます。

夫が本当に言いたい結論を引き出すには、まずは徹底的に相手に寄り添いながら、自分の意見は控えることが肝心です。たとえば、次のように話を聞いてあげます。

:「ああ、疲れた」
:「おつかれさま」
:「忙しくて朝早くから仕事をしていたから、疲れたよ」
:「忙しいんだね」
:「朝から晩までずっと働きっぱなしで、寝る以外の時間はすべて仕事という感じだよ」
:「それは辛いわね」
:「本当に困っていて、これが続くようだったら、会社を辞めようかと思っているんだ」
:「大変ね」
:「このままだと体がもたないし、働いてもわりにあわないからね」

 

ここまで話を聞いて、ようやく「このまま忙しい状態が続くなら会社を辞めたい」という夫の深層心理が見えてきました。

夫が本当に言いたいことを伝えたら、今度は妻に「どう思う?」と意見を求めてきます。そこで、初めて聞き手は意見を言えるのです。

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