「カン違いの多い人」が知らない会話の本質 人は自分が「聞きたい」ように聞いている

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復唱するためには教わったことを完全に理解していないとできません。あいまいな理解のままだと論理展開が組めないので、説明もアヤフヤになります。何度も指摘しているように、人は脳の補完機能があるため、すぐにわかったつもりになります。復唱によって自分がどこまでを理解して、どこから理解していないのか、はっきり認識することができるのです。

仮にすべてを理解して難なく復唱できたとしても、復唱したことによって記憶を定着させやすくする効果もあります。仕事の現場でも後輩などに何かを指導して、それが伝わったかどうか確認したいのであれば、復唱してもらうことが最も確実です。

また復唱は自分自身で行うこともできます。たとえば研修やセミナーで何かを学んだり、本を読んだりしたとき、本当に自分がそれを理解したかどうかをチェックするには実際にアウトプットしてみることをおすすめします。

誰かに口頭で説明してみてもいいですし、文字に書き出しても構いません。SNSを使って「備忘録」と題して学んだことを簡単な文章にまとめてみてもいいでしょう。他人が読んでも理解できる文章を書くには、確実に自分自身が理解している必要があるわけですから。

また、ビジネスのコミュニケーションにつきものなのが「言った」「言わない」のトラブルです。相手と自分の記憶が異なるわけですから、互いの正当性を主張したところで結論は出ません。

そういった事態を防ぐためには客観的な事実として記録を残すしかありません。最近はスマホで手軽に録音ができますが、すべての会話を録音するのも現実的ではないので(マナー上の問題とデータ容量の問題で)、ここはやはり、もっとも原始的、かつ手軽なメモがいいでしょう。

とくにメモであればその場で書き込みつつ、相手にもそれをリアルタイムで見せることができます。実はこれが非常に重要です。一般的に会議の席などで相手にも見えるようにメモをとる人は少ないですが、あえて相手にも見えるように堂々と書き出す方が、経験上、絶対におすすめです。

もちろん、ホワイトボードやフリップチャートがあれば、そこに書き出していくのもおすすめです。ホワイトボードはスペースがなくなったら、写真に撮って新たに書き出しましょう。

対面のコミュニケーションにこだわる意味

いくら当人が「伝えたつもり」「聞いたつもり」でもミスは起きます。対面でのコミュニケーションですらそうなのですから、顔の見えない電話やメール、SNSではどれだけコミュニケーションミスが起きているか、恐ろしくなったかもしれません。

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非対面型コミュニケーションの弱点は、相手の反応がリアルタイムでわからないことです。対面で意識を相手に向けていれば、相手の顔色が変わったり、言葉の前に微妙な間が入ったりとわずかな異変にも気づくことができます。そうやって反応がわかるからこそ臨機応変に軌道修正がかけられるわけですが、相手の顔が見えないメールであったら反応を想像するしかありません。

まだ電話であれば口調で反応がなんとなくわかりますし、LINEやメッセンジャーでリアルタイムに短文の応酬をするのであれば若干はマシかもしれませんが、それでも対面での会話に勝るものはありません。

仕事のスピードアップのためにさまざまなコミュニケーションツールを活用することはいいことです。しかし、相手に誤解されるおそれがある場合や、相手の反応を見ながらではないとうまく伝えられない込み入った話などは、手間がかかっても電話なり対面での会話を心がけましょう。

(お知らせ)9/27(火)に筆者の出版記念セミナーが東京・南青山で行われます
宇都出 雅巳 トレスペクト教育研究所代表・学習コンサルタント

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うつで まさみ / Masami Utsude

速読×記憶術を活用した勉強法の専門家。トレスペクト教育研究所代表。1967年生まれ。東京大学経済学部卒。出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学に留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立。30年以上にわたり、速読・記憶術を試験勉強に活用しながら実践研究を続け、独自の勉強法を確立した。多くの受験生を司法試験、医学部受験という難関試験で合格に導きながら、自らもCFP、行政書士、宅建士、50代で公認会計士、システム監査技術者試験などに合格。現在は監査法人に勤務。著書に『速読勉強術』(PHP文庫)、『どんな人でも1番結果が出る勉強法 合格は「あたりまえ化」の法則』(TAC出版)など。

 

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