インバウンドで関西経済「再活性」への道筋 どないやねん?ポスト橋下の大阪・関西

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今後、これらのコンテンツがアジア各国で二次利用されるのにあわせて、ロケ地巡りツアーを企画するなど、インバウンド需要を喚起していくべきだ。特にこれまであまり外国人観光客を取り込むことができていなかった神戸にとっては、絶好のチャンスになりうるだろう。

アニメ関連では、大阪には「関西の秋葉原」といわれる日本橋がある。2005年から開催されている「日本橋ストリートフェスタ」は近年コスプレがメインとなっており、1日で20万人以上を集める一大イベントとして定着している。2016年7月には、大阪・心斎橋のオーパ本館8階で運営している訪日外国人案内所「OSAKA TOURIST INFORMATION CENTER」が「OSAKA TOURIST INFORMATION CENTER OTA BASE(オタベース)(宅男基地)」としてリニューアルオープン。クールジャパンコンテンツを核に、オタク観光スポットやイベントなどの情報提供を行っている。

見えざるインバウンド消費につなげ

インバウンドによる効果を考えるとき、増加する外国人観光客の直接的な消費だけでなく、輸出や越境ECなどによる消費が拡大していることにも着目しておく必要がある。旅行みやげとして購入された商品が、帰国後に改めてECでリピート購入されるなど、好循環が生まれている。

対中国の越境EC市場は年率50%超のペースで成長しており、2018年には中国からの購入金額は1兆3943億円になると推計されている。外国人旅行者の消費額全体が3.5兆円(2015年)であることを考えると、その潜在市場の大きさがわかる。

アジア向け輸出も拡大している。日銀大阪支店のレポートによると、関西からアジア各国への輸出額は、2010年比で酒類は2倍、歯ブラシは3倍、文房具(中国向け)は 2.4 倍、炊飯 器は 2.2 倍、冷蔵庫は 3.5 倍と急激に拡大している。

観光を切り口に、ジャパンクオリティの製品、サービス、コンテンツの輸出拡大につなげることで、得られる経済効果は大きなものになる。急激に増加する外国人観光客数と外国人旅行消費額。それに加えて急速に顕在化する越境EC市場、輸出の増加。この裾野の広さこそ、インバウンドが関西経済の起爆剤として期待されるゆえんである。

小泉 洋平 三菱総合研究所主任研究員

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こいずみ ようへい / Yohei Koizumi

大阪府出身。関西学院大学総合政策研究科終了。三菱総合研究所関西センターにて、主に関西の民間企業や経済団体、行政向けのコンサルティングに従事。

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