インバウンドで関西経済「再活性」への道筋 どないやねん?ポスト橋下の大阪・関西

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4000万人という目標は、空路・水路での入国だけで見れば世界トップ3の水準であり、6000万人にいたっては、実に世界一の水準だ。達成に向けたハードルは非常に高い。今後、空路での受け入れをさらに伸ばしていくためには、全国の地方空港の有効活用が不可欠である。関西においては、伊丹の再国際化や神戸の国際化、24時間化などについても検討が必要になる。

②宿泊施設の確保

ホテル不足も大きな課題である。2016年に入ってホテルの稼働率は対前年比で低下しているものの、それでも大阪ではいまだ80%を超える水準で推移している。昨年来の深刻なホテル不足を受けて、大阪市内では建設ラッシュが進んでおり、既存の全客室数の2割にあたる8500室が2018年までに新たに供給される見通しである。

ホテル業界からは急激な客室増加に対する懸念も聞かれるが、弊社推計によると、これでもまだ宿泊施設の供給量は長期的には十分でない。民泊市場の適正な成長や、広域観光の促進による地方への宿泊シフトなどが重要なファクターになる。

③地域住民との共生

外国人観光客がさらに多くなると、地域住民とのトラブルが表面化するケースも増えてくるだろう。観光客と地域住民の共生・住み分け、安全性の確保も重要な課題である。すでに、観光地周辺の住民が観光客の来訪を忌避するようなケースが出始めている。

たとえば観光地に向かうローカル線、嵐山と四条大宮を結ぶ嵐電本線では、ハイシーズンの週末になると駅のホームは人であふれ、周辺住民の利用に支障をきたすような状況が生じている。また、中国人観光客でごった返す心斎橋筋商店街を避ける、日本人の「ミナミ離れ」も指摘されている。外国人観光客の受け入れ環境整備に加えて、多文化共生の地域づくりも今後の重要なテーマである。

日本版DMOの果たす役割とは

④マーケティング機能の強化

固有の地域文化や四季折々の景観、食など、日本にはさまざまな魅力があるが、現状の外国人観光客の訪問先は特定テーマおよび特定エリアに集中しており、多様な楽しみ方を提案できているとは言いがたい。その主たる原因のひとつが、マーケティング情報の不足である。国の統計情報だけでは地域における外国人観光客の動向を十分に把握することができない。

インバウンドの売り上げについて、「シェアが僅少」「定量的に把握できていない」などの理由から、マーケティング調査に十分な費用をかけることができずにいる事業者も多い。その結果、『トレンド変化の早い外国人観光客のニーズを適切にとらえられない』『発地側のマーケティングに着手できない』『観光資源の訴求すべき魅力を特定できない/ブランド化できない』といった状況に陥ってしまう。

このような状況を受けて、各地で日本版DMO(=Destination Management Organization)の設置準備が進められている。8月31日現在、日本版DMO登録候補法人は日本全国で101件。今後、これらの日本版DMOを中心にマーケティング機能の強化に向けた取り組みが進むだろう。その際、既存の事業者・研究機関が有するデータや情報基盤を有効に活用することも重要だ。MRIでも、民間事業者と連携したリサーチ・マーケティング情報基盤の構築を進めており、積極的に貢献していきたい。

受入側の制約条件をクリアし、マーケティング機能を強化することができれば、外国人観光客数はまだまだ伸びる余地がある。なぜなら、前回の本コラムでも述べたように、インバウンド市場拡大の主因は中国をはじめとするアジア新興国の経済発展によるものであり、海外出国者の増加トレンドは今後も継続する可能性が高い。また、それらの国においては、海外出国に占める日本選択率もまだ数%~20%程度の水準にすぎず、向上する余地があるからである。

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