インバウンドで関西経済「再活性」への道筋 どないやねん?ポスト橋下の大阪・関西
飽和した都市部から多様な地方部へのにじみ出しが進んでいくことは受入側にとって望ましいというだけでなく、外国人観光客自身にとっても大きなメリットになりうる。現地の交通、宿泊、飲食などの情報に加えて、歴史的背景やストーリーなど、より詳細な情報にアクセスできるようになれば、観光客は、より自分自身のニーズにマッチした旅行を、自らデザインすることができるようになるだろう。
③「商店街」に代表される日本らしさや生活にふれる場所 (例:京橋、千林商店街など)
インバウンド市場の成熟に伴って、日本らしさや生活に触れることができる場所が人気となっている。その意味で、日本の商店街は外国人にとって魅力的なスポットだ。すでに多くの外国人で賑わう大阪ミナミの心斎橋筋商店街、戎橋筋商店街に加えて、魚介類を中心に生鮮食品を買ってその場で食べることができる黒門市場、堺の包丁など専門性の高い日本製品が買える千日前道具屋筋商店街などが、人気スポットとして定着しつつある。
これからも第二、第三の黒門市場を目指して、たとえば京橋エリア(新京橋商店街、京橋中央商店街)や千林商店街など、多くの商店街が外国人観光客向けのプロモーションを強化しており、多くの商店街がそれぞれの独自性を打ち出し外国人観光客を取り込んでいくと考えられる。
④官民を挙げて取り組む大阪の「新しい都市魅力」創造の取り組み (例:御堂筋【淀屋橋~心斎橋間】)
大阪では、官民一体となって都市魅力を向上させるための取り組みを進めてきた。2001年ごろから河川区間の再生や水質浄化の取り組みが始まり、「水都大阪-」「 水と光のまちづくり」などを推進した結果、今では道頓堀、中之島公園、八軒家浜などに船着場が整備され、気軽にクルーズを楽しむことができるようになった。また、北浜では規制緩和による川床が設置され、飲食を楽しむこともできる。
今でこそ、ミナミや大阪城など大阪市内各所に外国人観光客があふれているが、もしこういった長年にわたる大阪府市、地元、経済界あげての環境整備やPRの努力がなければ、今の活況はなかっただろう。その後も、大阪城や中之島公会堂でのプロジェクションマッピング、御堂筋のイルミネーション、中之島界隈のライトアップなど、次々と新たな試みが実行に移されている。今夏は初めてウォータースライダーやナイトプールなどを備えた「大阪城ウォーターパーク」も開催された。
これらの取り組みのうちいくつかが今後、外国人観光客向けのキラーコンテンツとして、大きく花開くかもしれない。特に、イルミネーションが定着しつつある御堂筋界隈(淀屋橋~心斎橋間)は、ホテルの建設も計画されており、これからの人気スポットになる可能性がある。
個人旅行客を引き込むコンテンツのパワー
⑤映画、ドラマ、マンガなどの「コンテンツの活用」 (例:NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』<大阪>、『ぺっぴんさん』<神戸>)
個人旅行者を中心に、日本の映画やドラマの聖地を訪ねるのも人気だ。有名な例では、中国の人気映画「狙った恋の落とし方」(2008年)を契機に北海道ブームに火がつき、それ以来、北海道は中国人にとっての人気観光地として完全に定着した。また、最近では佐賀県のタイ向けフィルムコミッションの成功が知られている。
関西においても、2015年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」では、ディーン・フジオカ氏が演じる五代友厚がブレイク。ゆかりの地を巡る国内観光客が急増した。また、2016年10月から放送が予定されている「べっぴんさん」のヒロインは、子供服メーカー「ファミリア」の創業者である坂野惇子がモデルになっている。物語の舞台となる神戸市ではすでに「べっぴんさん」を活用した観光計画を練っている。
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