今回の塾では、2カ月かけてレクチャーをしてきた。まずその中で感じたのは、学生たちの表情が最初と最後では、雲泥の差があった、ということだ。最初は、仕事の意味も分かっていないし、こちらが言う言葉の意味も理解しきれていない。それでも、プログラムに沿って鍛えていくと、8週間程度で思考のプロセスが形成されてきた。答えが正しいかどうかということや、こちらが期待した答えを生み出すことが大事なのではなく、自分で導き出した答えが、きちんと相手に伝わっているかが大事だ。業種に関係なく、これが社会人になってから、重要となるスキルだろう。
多くの学生は、最初はおとなしくてぼそぼそしゃべっていて、リーダー像からはほど遠かった。正直、大丈夫だろうかと不安に思った。だが、短期間の訓練で、皆、はっきりと自分の意見を言えるようになっていたし、いい観点の質問が挙がってきた。キッカケがあれば、若い人は柔軟な分、すぐに変わることができる。
若手社員がダメなのは上司の責任
――若い人ほどすぐ変われるのであれば、職場での世代間コミュニケーションが難しいのはナゼでしょうか。
確かに世間でも、ゆとり世代は欲しいものがないだとか、欲求が乏しくてダメだとか言われているが、私はまったくそうは思っていない。
むしろ、私が働き始めた22年前より、今はもっと環境も仕事も難しくなっていて、とても厳しい。若者の能力が落ちると言うが、ゆとり教育だから若者の能力が落ちるというわけではない。なぜなら、今は知識が多ければいいという時代ではない。われわれは、大学までに身に付けた知識で仕事をしているのではない。大学までにどう学んだから、会社に入ってからどうなるとかは関係ない。むしろ、会社が入ってきた若者を鍛えられるかどうかが重要なのだ。
もし、学生時代の教育プログラムを持ち出して「やっぱりゆとり世代だなぁ、使えないなぁ」と、先輩が感じたなら、それは若手社員本人たちの問題ではなく、マネジメント層の責任問題だ。上司や先輩がきちんと新人を鍛えているのかどうか、だ。また、成長できていない若手社員がいたならば、ちゃんと上司は彼らをモチべートできているのか。仮に、若手社員が、「仕事ができない」のであれば、それもまた若手社員の責任ではなく100%上司の能力不足だ。
冷静に考えれば、20年経ってこれだけ世の中が発展しているのに、人間の能力だけが劣化しているとは到底思えない。逆に、上の世代は、リーダーとして下の世代にビジョンを語れていますか、と聞きたい。やるべきことを伝えきれていないなど、上司の能力が低いのかもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら