「TOEFL義務化」は再生か?破壊か? TOEFLパニックが始まった

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しかし、今の自民党案では、「すべての大学」を受験する学生をTOEFLスコアで判定するとなっています。ということは、あらゆる大学を受験するすべての高校2,3年生が皆TOEFLを受けるということになります。

現在、大学入試のスタンダードはセンター試験ですが、これはTOEFL試験とは比較にならないくらい簡単な試験です。また、TOEFLのようにスピーキングやライティングもありません。その試験ですら、120点前後の平均点しかとれず、もがいている母集団に対して、最もレベルが高い英語試験の一つであるTOEFL試験をあまねく義務づけるというのは、非現実的ではないでしょうか。英語が苦手な多くの高校生は、ただ試験場のパソコンの前に座って、4時間画面を眺めるだけになってしまうかもしれません。

対象レベルとのマッチングを

「大学入試を4技能判定に代替する」という案自体はすばらしい物だと思います。私自身は大賛成です。ぜひ実現していただきたい。問題は、使用する試験のレベルだけだと思います。お隣の韓国では、似たようなスキームがすでに実現し、成功しつつあります。その大きな成功要因のひとつは、使用される試験のレベルが高校生の実情にマッチしていることだと思います。

韓国では、NEAT(国民英語能力試験)という4技能テストが、大学入試の出願要件に変わる予定です。私もサンプル問題を解いてみましたが、このNEATは、中高生の英語学習に適切なレベルを考慮して問題が作成されており、大学のレベルによって2級を使用する大学と、3級を使用する大学に分かれます。

また、指導教材や準備用の映像素材も提供され、試験の準備過程まで国がバックアップしています。そしてNEATで基礎固めができたトップ層は、スムーズにレベルアップしてTOEFLテストの受験にも進むことができるわけです。大学受験のためのNEATが、留学に必要なワンランク上のTOEFLテストへの良い階段にもなっているわけです。

この韓国のテストシステム改変の周到さと比べると、今回の自民党案は、思いつきによる荒療治に思えます。確かにTOEFLのレベルや高校生の学力レベルをよく知らない人たちの受けはよいかもしれません。しかし今後、試験のレベルと対象となる母集団の学力レベルの検証を徹底するべきです。

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