米国人が魚の「産地」に関心を持つ日は来るか 水産物のトレーサビリティに挑む米企業

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ボックスに添付されたQRコードをスキャンすると、魚がどこで、誰によって、どのように捕られたのがわかる(写真::Kieran Kesner/The New York Times)

同社ではトレーサビリティ用ラベルを魚のパッケージに貼っている。このラベルにはバーコードが印刷されており、スマートフォンでスキャンすると誰がどこで、どのような手法で水揚げしたかを調べることができる。魚ごとのデータを記したウェブサイトが自動的に作られているため、買い手(主に全米の高級食材を扱う卸売り業者と、そこから仕入れを行う業者)は簡単に魚の来歴を知ることができるわけだ。

レッズ・ベストの従業員は現在、ほぼ100人。アウアーバックによれば、今年の魚介の取り扱い量は900万キロを超える見込みだ。仕入れ先は1000隻の小型漁船で、ほぼ同社だけに魚を卸している。

目標は消費者への直販

同社が今後、目標としているのは消費者への直販だ。「たとえばクロマグロが今この瞬間に、マサチューセッツ州プロビンスタウンで水揚げされたとする。それを消費者が1ポンド注文すると、明日には配達されるというわけだ」と彼は言う。「サプライチェーンのもっとも先まで売っていきたい」。つまり、ボストンの加工場から一般家庭の冷蔵庫に直接送り届けたいというわけだ。

「私の手元にはデータがあり、魚がある。魚への需要があるのは分かっている」

シー・トゥー・テーブルも、年内に一般家庭向けの販売を始めたいとしている。だが地元産の魚介類の価格は、多くの米国人が普段、水産物に支払っている額よりも高くなりがちだ。これは米国において水産物の偽装が盛んに行われている理由の1つになっている。

「米国の水産会社は、経営がしっかりしていて順調に成長している」と語るのは、シー・トゥー・テーブルの創業者であるマイケル・ディミンだ。「だが米国の消費者は安い食品を買うように習慣づけられている。輸入水産物は非常に安いが、それはIUU漁業(で水揚げされたもの)だからだ」

IUUとは違法(illegal)・無報告(unreported)・無規制(unregulated)の略だ。その結果、環境に優しくない漁法で捕られた安い魚介類が米水産市場や小売チェーンに大量に流れ込んでいる。

「うちの売りはトレーサビリティだ」とディミンは言う。「生産地に光を当てることができれば、十分な情報に基づく決定が可能になる」

アウアーバックも地元産の魚介類の一部が高価であることは認める。だが、メジャーな種類ではないが手ごろな価格のものも多いと彼は言う。「オヒョウやホタテガイは金持ち向きかも知れないが、サメやガンギエイ、タイやサバならどれもとても安くて体にもよく、味もすばらしい」

(執筆:Claire Martin記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service
 

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