元トランプ選挙参謀を囲む「黒い簿帳」の衝撃 ウクライナ前政権と懇意だった米国人の正体
「ウクライナで何が起こっていたか、彼は分かっていたはずだ」と、キエフ検事局の元高官、ビタリー・カスコは言う。「誰の目にも、ヤヌコビッチのグループが汚職に関わっていたことは明らかだったはずだ。あの状況を見て『まったく何も問題がない』と考えることは不可能だ」。
マナフォートはニューヨーク・タイムズ紙による取材要請にも、文書による質問にも応じなかったが、彼の弁護士であるリチャード・A・ハイビーは、汚職対策局が指摘した「現金の支払い」はまったく受けていないと話した。また、マナフォートが汚職を黙認していた、あるいは違法行為を行っていた人々に関わったと示唆するカスコの発言についても、異議を唱えた。
「政治的な色合いの強い発言だ」とハイビーは言う。「証拠もないのに人を中傷するような申し立ては尊重できないし、そもそも証拠など存在しない」。
マルコスの政治コンサルタントも
ウクライナにおける展開からは、1980年代以来マナフォートの事業の主体となってきた、国際コンサルティングの危険性が見えてくる。1980年代に、彼は当時フィリピンを独裁していたフェルディナンド・マルコスのために仕事をした。この春、ドナルド・トランプの選挙運動に加わるまでは、彼の最近の顧客で最も有名だった人物はヤヌコビッチだった。ヤヌコビッチもマルコスと同様に、民衆の蜂起により退陣させられた。
ヤヌコビッチと彼の政党である地域党は、ヤヌコビッチが2年前にロシアに逃亡するまで、マナフォートと彼の会社によるアドバイスに大きく依存してきた。マナフォートらは、ヤヌコビッチの選挙での勝利に何度も力を貸した。海外のクライアントを代表して米国の政策に影響を及ぼそうとする者は、米国司法省に外国エージェントとしての登録を行うことが求められているが、この間マナフォートは登録を行っていなかった。彼の下請け業者の一人は登録をしていた。
マナフォートが行ってきた活動が、登録が必要なものなのかはわからない。もし、活動が地域党へのアドバイスだけであれば、おそらく登録の必要はないだろう。しかし、彼はヤヌコビッチの西側でのイメージアップのために仕事をし、2012年には、ライバルのユーリア・ティモシェンコに対する告発を支持する文書を、同政権が執筆するのに手を貸した。
登録を行うと、誰がいくら登録者に報酬を支払うのかを公表しなければならない。だが、マナフォートは登録をしていないので、彼の報酬は謎のままだ。しかし、ヤヌコビッチ政権崩壊のあとに発見された文書が、何らかの答えを提供するかもしれない。