山崎拓氏が激白「憲法改正は現状では不要だ」 「解釈改憲がまかり通るなら改正は必要ない」

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――「加藤の乱」は、森首相辞任から小泉政権誕生のきっかけとなり、山崎さんは幹事長や副総裁を歴任されました。小泉首相についての評価は高いようですが、その薫陶を受けた安倍首相はどう評価されますか。今の自民党は「安倍一極支配」とも言われます。

山崎:それは、小選挙区制度と世代交代のなせる業だと思います。私は、最初の政治改革との関連でいえば、「政治改革」と「小選挙区制」をイコールにしたことが間違いだったと思っています。

小選挙区が中心の選挙制度では、どうしても「党本位制度」になる。今も派閥はないも同然です。候補者も党の公認によって決まり、しかも一人です。当然のことながら権力は党に集中します。要するにこれが今のように「党に自由にものがいえない」元凶を作ることになっているんです。

中選挙区制による派閥が国家を強くしていた

――以前の中選挙区制度のほうが良かったということですね?

山崎:そのとおりです。中選挙区制度では党から複数の候補者が当選する可能性があり、その結果派閥ができるわけですが、要はそこで権力闘争が起きるわけです。派閥間で権力闘争がある場合は、ただけんかするだけではなくて(笑)、「この派閥はこれをやる」という政策目標を掲げなければいけないのです。それがすなわち国家目標になるわけです。

小選挙区制になると、政党が国家目標を掲げないかぎり、何もないということになる。7月の参議院選挙はまさにそうでした。安倍政権は憲法改正を正面から掲げなかったから。だから何をやろうとしているかが国民からも見えない。消費増税を再延期するといっても、アベノミクスに資するかどうかということでしたし、増税の再延期については野党も賛成しました。ですから争点のない選挙となってしまいました。

――本来、憲法改正は安倍政権の最大目標のはずです。しかし、結局7月の参議院選挙では自民・公明の両与党は、憲法改正を真正面から取り上げず、結果的には参議院でも「改憲勢力」が3分の2超を占めることになりました。自民党を代表する改憲論者であり、防衛庁長官や自民党憲法調査会の特別顧問も歴任された山崎さんは、現在の状況をどうご覧になっていますか?

山崎:安倍総理は昨年9月、日本の安全保障上の必要性を強調しながら、実際には、自らの名誉心を満たすために憲法解釈の変更を行いました。つまり解釈改憲です。今も、本当に必要な憲法改正をするのではなく、「改正のための改正」をしようということになっています。

「改正のための改正」だから、超党派で賛成できるテーマ、たとえば大災害時などの対応を定めた「緊急事態条項」を創設するとか、「環境権」を加えたり、などといった議論になっていますね。

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