山崎拓氏が激白「憲法改正は現状では不要だ」 「解釈改憲がまかり通るなら改正は必要ない」
山崎:「加藤の乱」の失敗の一つは、本にも書きましたが、小沢一郎(当時自由党党首、現「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表)さんと手を組んで多数派工作を行ったことです。YKKの本質は権力闘争ですが、加藤さんは純粋理性のように見えるが、どちらかといえば実践理性。権力をとれればいいわけですから左から右までどんな人でも会う。つまり、加藤の乱は手段を選ばない形で進行したわけです。
――軍師官兵衛を自認していた山崎さんとしては、「もしあのときこうしていたら」というのはありますか?
山崎:それは簡単な話です。やはり「電撃的なクーデター」でないと駄目だったんです。倒閣の企てが表ざたになって事実上20日間もかかったのでは、切り崩されもします。また、加藤の乱はあくまで国会の中の与野党の数合わせだったということです。これが選挙で訴えて国民の投票になるというなら話は別だったのでしょうが。
また、もう一つの大きな失敗は、野党側の全体を把握していた小沢一郎さんと通じて、多数派工作を行ったことです。切り崩されるもとをつくってしまった。結局は、反経世会を標榜していたはずのYKKの政治行動からすれば、元経世会の小沢さんと組むことは、矛盾をきたしていたわけですね。
田中角栄と小沢一郎の違いとは?
――田中角栄元首相の手法を学んだはずの小沢一郎氏は、民主党の誕生に大きく関わり、2009年に政権こそ奪取しましたが、そのあとは政治資金疑惑等でオウンゴールみたいになって事実上存在感が薄くなってしまいました。今、田中角栄ブームになっているということで言えば、「器の違い」なのでしょうか。
山崎:性格も器の中に入れるということなら、田中角栄ほどの器ということではなかったということでしょう。私は本の中で、YKKを夏目漱石の「草枕」の一節を引用してたとえて見せたのですが(智に働けば角が立つ=加藤、情に棹させば流され=山崎、意地を通せば窮屈だ=小泉)、田中さんはこの智・情・意の3つのバランスがよくとれていたと思います。特に情のボリュームというのはひとケタ違っているのではないでしょうか。
小沢さんは用意周到に、権力の座から比較的早く降ろされてしまった田中角栄の轍を踏まないようにしたと思うのです。頂点につけばあとは転がり落ちるだけですから。だから事実上の「傀儡政権」を作った。端的に言えば細川、羽田、鳩山の各政権です。最後に自分が表舞台に立とうかというところで、結局は田中角栄に学んだ錬金術の操作で倒れることになります。彼は、現役の政治家であるので、酷な言い方なのですが。
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