喜劇役者が主役を演じるイタリアの悲劇 景気・経済観測(欧州)

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民主党のベルサニ書記長は、長年の政敵で、政策面での隔たりが大きいベルルスコーニ陣営との大連立の可能性を否定する。両会派はいずれも選挙期間中に減税を公約に掲げていたが、ベルルスコーニ陣営が不動産取得税の減税・税還付を約束したのに対し、民主党が導入を目指すのは低所得者向けの減税措置で、両党の政策目標は食い違う。

ベルルスコーニ前首相の周辺には、これまでも汚職や性的スキャンダルなどさまざまな疑惑が取りざたされてきた。選挙戦終了直後にナポリの検察当局から新たに贈収賄の容疑で捜査を受けているほか、捜査目的で入手した盗聴記録を親族が経営する新聞社に不正に漏洩した罪で有罪判決を受けるなど、新たな問題も浮上している。

今回の総選挙の投票率は75%前後と、2008年の前回選挙の80%前後を下回った。既成政党批判を掲げた五つ星運動が大躍進したことからも、イタリア国民の根強い政治不信がうかがえる。

民主党陣営も関係の深いモンテパスキ銀行の損失隠し問題が批判の的となっており、スキャンダルまみれのベルルスコーニ陣営と手を組めば、国民への背信行為と受け止められるおそれがある。再び非政治家を首班とする暫定政権を設立し、中道左派・中道右派が支持する場合も、同様のそしりを受けるだろう。

 鍵を握る五つ星運動

今やイタリア政局の行方は、グリッロ氏が鍵を握っていると言っても過言ではない。血気迫る演説と髭面の風貌が印象的な同氏は、インターネットを中心に活動を展開し、既成政党批判や大衆迎合的な主張で国民の支持と注目を集めてきた。

大連立の可能性を否定する議会最大勢力の中道左派連合は、政権樹立を目指し五つ星運動との連携を模索しているが、グリッロ氏はいかなる政党も信認しないとの立場を崩していない。既成政党批判で支持を伸ばしてきた同団体が、既成政党の支持に回れば自己否定につながりかねない。

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