1つ目は「自己肯定」の習慣だ。
サッカーはチームスポーツのため、上司や同僚、もしくは環境に責任転嫁をしやすい。選手のチームに関する愚痴は、日常茶飯事だ。
だが川島は、いっさい自分のチームを批判しない。所属する組織への批判は、自己否定をするのと同じと考えているからだ。
こんなエピソードがある。現在イングランドでプレーする吉田麻也が、まだオランダのフェンロでプレーしているときのことだ。戦力が限られたフェンロは攻め込まれる時間が長く、DFの吉田は試合中に何度もピンチにさらされ、フラストレーションがたまる日々を送っていた。日本代表に招集されてチームメートに会うと、どうしても「最悪っすよ」と愚痴が漏れてしまう。
そんな後輩に、川島ははっきりと言った。
「マヤ、オレたちは今いるところでやるしかないんだ。おまえがフェンロを『ダメだ、ダメだ』って言っているのは、フェンロを選択した自分自身を批判していることになるんだぞ」
これ以降、吉田はチームの愚痴を言うのをやめ、「ここは自分を高める場だ」と考えられるようになった。川島の言葉がなくても、いつか吉田はイングランドへの移籍を果たしていたかもしれないが、この言葉によって成長スピードが速まったのは間違いない。
「パテック・フィリップ」を“衝動買い”した意味
2つ目は「思いを込めた物を持つ」という習慣。
冒頭で触れたように、2010年W杯の大会直前、突然、川島は日本代表の正GKに抜擢された。準備ができていないGKだったら、ガチガチになったまま大会を迎えたかもしれない。
だが、川島は違った。
南アフリカに飛ぶ前に行われたスイス合宿の最終日、選手にはジュネーブで自由時間が与えられた。そのとき、川島は周囲を驚かせる行動に出る。超高級腕時計「パテック・フィリップ」を“衝動買い”したのだ。「パテック・フィリップ」の平均価格は、約400万〜600万円。気軽に手が出せる値段ではない。
当然、この買い物には大きな意味があった。川島はこう説明する。
「自分にとっては、こういう瞬間は二度とないと思ったんです。ずっと欲しかったブランドの時計の本店がジュネーブにあって、さらに自分がW杯に出るかもしれないという状況だった。本当はW杯が終わったら自分へのご褒美として買ってもいいかなとか、ヨーロッパに移籍することがほとんど決まっていたので、ジュネーブに寄って買おうかなとか思っていたんですが、これだけ条件がそろったら『買うしかない!』と」
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