米国の貧困根絶には「職業訓練」が必須だ 「ばらまき」では、自立を促すことはできない

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今米国では、左派と右派の両者が既存の貧困対策プログラムにどう向き合うべきか悩んでいる。複数の推計によると、1964年に当時のジョンソン大統領が「貧困との戦い」を提唱して以来、貧困対策につぎこまれた資金は計22兆ドルを超過したが、米国の貧困率は改善せず、約15%のままだ。

右派では、ポール・ライアン下院議長が示したように、米国はすでに十分な貧困対策の支出を行っており、今後はその分配を見直すだけだと主張している。ライアン議長のプランは、あくまで経済成長を重視し、雇用創出につなげる方向を目指している。

一方の左派では、複数の政治団体が特定の対象者に向けた所得補塡や教育、就職機会の提供を訴えている。ヒラリー・クリントン氏の政策綱領でも、貧困問題に対処する新プログラムが提唱されたが、そこには家族介護休暇や早期教育、大学教育といった政策が盛り込まれた。

ブリッジ・アカデミーのように、地域社会に深く根ざしてそのニーズに対応し、効果が実証されている事業は、きちんと機能する。しかし、不幸なことに、結果にフォーカスしない全国的なプログラムによって、これとは逆の取り組みがなされることが多々ある。

成果重点型への転換を

国が社会保障に取り組む際、その成果に重点を置かずに大ざっぱなプログラムを採用しがちだ。たとえば米農務省の食糧栄養局(FNS)の年間支出820億ドルのうち88%は、直接の支援であるSNAPに振り向けられているが、政府の支援を受けなくても済むような技能を人々に習得させるために充てられているのは僅か0.33%にすぎない。さらに悪いことには、こうした技能集中型のプログラムを評価するデータがまったく存在していない。

「進歩的な連邦主義者」によるプログラムは、技能集中型の支出を急増させ、評価を厳格化させるだろう。こうしたプログラムには高い基準が設定されるが、都市や州に改革を促すとともに、きちんと機能する対策へと資金を振り向けることになる。

われわれは今こそ、考え方を切り替えて思考や支出を整理し、フレズノ・ブリッジ・アカデミーのように、成果を重視した実りある取り組みを始めるべきなのだ。

週刊東洋経済8月13日・8月20日合併号

ローラ・タイソン 米大統領経済諮問委員会元委員長

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Laura Tyson

米カリフォルニア大学バークリー校教授。ロック・クリーク・グループのシニアアドバイザー。

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レニー・メンドンカ マッキンゼー&カンパニー元取締役

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