身近な割に誤解が多い「日本の牛肉」の真実 和牛と国産牛の違いを知ってますか?

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実は「和牛」と呼べる牛は4種もある。もちろん「黒毛和種」はその筆頭で、日本を代表する肉用品種だ。黒毛のルーツとなった但馬牛はもともとそれほど体格のよい牛ではなかったのだが、肉に細かなサシが入るためおいしいことで選抜・育種が進み、今日では大きな体躯でサシがばっちり入った黒毛がどんどん増えている。

それ以外の3種は、黒毛に比べるとかなり知名度は低いのだが、個性派ぞろいだ。たとえば、熊本県や高知県で「あか牛」と呼ばれ愛されている「褐(あか)毛(げ)和種」も有名な牛だ。“かつもう”と読む人もいるが、正式には“褐毛”と書いて“あかげ”と読む。牛の通になりたければ覚えておいたほうがいい。

写真左が熊本、右が高知の「あか牛」

褐毛は朝鮮がルーツの品種をベースに、外国の肉用種を掛け合わせたりして成立したものといわれ、放牧して草を食べさせるのに向いている。熊本の阿蘇地方で、広大な草原で放牧されている茶色の牛の写真をよく見ると思うが、あれが褐毛和種だ。ちなみに熊本の褐毛と高知の褐毛とは、正確に言うと系統の違う牛で、味わいも違いがあるのだが、分類上は同じ褐毛和種とされている。

「短角和種」は最近、赤身肉ブームにおいて「赤身がおいしい牛」として名が広く知られるようになってきた和牛品種だ。岩手県の北部、その昔は南部地方と呼ばれていた地域で、農耕や塩を内陸に運ぶために使役していた牛を「南部牛」という。この南部牛にショートホーンという外来の肉用種を掛け合わせてできたのがこの短角だ。サシも入るが赤身肉の部分が比較的多く、そしておいしい。

もう1種、山口県で飼われている「無角和種」がいる。日本の黒毛和種に、ヨーロッパで生まれた肉用牛であるアバディーンアンガス種を掛け合わせた品種で、その名のとおり角がない珍しい品種だ。ただし和牛品種の中で最も頭数が少なく、2012年4月の段階でおよそ200頭しか残っていない、希少品種だ。

同じ「和牛」でも肉質がまったく違う

写真左が黒毛和牛のA5、右がホルスタイン。乳用種であるホルスタインは盤が小さく赤身中心となる

さて、この4種を「和牛」と呼ぶのだが、同じ和牛だから肉質も似ているかと思いきや、まったく違う! 黒毛和種といえばなんといってもサシ。甘みと香りを感じるきめ細かいサシが入り、肉まで軟らかいというのが特徴だ。褐毛和種は、黒毛ほどではないにしろサシも入るし、赤身肉のうまさもほどよいバランス派だ。それに対して短角和種は圧倒的に筋肉質で、赤身中心の肉。うま味たっぷりでかみしめて食べるのがおいしい。無角和種はその血統上、黒毛のような風味もあり、大ぶりに切ったステーキに向く肉質だ。このようにそれぞれまったく違う性質を持っているのだが、すべて「和牛」なのである。

4種の和牛品種以外にも、さまざまな牛が肉になっている。精肉売場で「国産牛」と標記された肉を見たことがあるだろう。そのほとんどが、日本で乳用種と呼ばれるホルスタインゆかりの肉だ。先にも書いたが、乳牛はメスでなければ乳を出さない。生まれてくる子どもの半分はオスだが、乳は出さないので最初から肉牛として育てられるのである。乳用種として品種改良されてきた牛なので、骨が太く肉の量が少なくて、肉質も和牛品種までは至らない。

次ページそこで、少しでも高く売るため……
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