つらい不妊治療の「やめどき」を考える 6組に1組の夫婦が経験

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いま、国内で不妊治療や検査を受ける夫婦は6組に1組とされる(2010年、国立社会保障・人口問題研究 所)。日本産科婦人科学会によると、国内で実施された体外受精などの生殖補助医療は、05年は約12万5千件だったが、13年は約36万9千件で約3倍に増えた。生殖医療で生まれた赤ちゃんは、13年は4万2554人で、累計で約38万4千人。40代半ばで妊娠する人のニュースも、珍しいことではなくなっている。

治療をすれば授かることができる──。そう信じ、病院へ通う人は右肩上がりに増えている。だが、同学会によると、1回の治療での出産確率は、39歳以下が10.3~21.4%、45歳以上は1%を下回る。

「1%以下の可能性しかないものは、もはや医療ではない。不妊治療の終わりを一緒に見据えることも、医師の責任です」

と話すのは、はらメディカルクリニック(東京都渋谷区)の原利夫院長。病院に通ってくる人たちは、年齢とともに薄々、自分の限界を感じ始める。けれど、翌月になると生理がくる。まだ大丈夫だと信じて、心身ともにつらい治療を続けてしまう現状に、終結という選択を示そうと考えているという。

夫婦で「あと1年宣言」

不妊治療体験者を支援するNPO法人「Fine」理事長で、『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)の著書がある松本亜樹子さんは、治療がやめられない人の心理をこう代弁する。

「治療することは、赤ちゃんを授かるための行動であって、『治療=希望』。それを簡単には捨てられません」

そんな患者たちは、どう心に折り合いをつけていくのか。埼玉県川口市の小宮町子さん(47)は、37歳から不妊治療をはじめ、のめり込んだ。夫にも自分にも、何ひとつ原因はない。「必ず授かるはず」と思い詰め、誰の意見も聞こえなくなった。だが、42歳の時、東日本大震災が起きた。震災の1週間後に入れていた病院の予約をキャンセルしたとき、ふと思った。

「自分のことだけ考えていてはいけないな。両親や夫など周囲の人を私も大事にしたい」

その後は自然と治療から卒業できたという。小宮さんは、

「ゴールを『妊娠するまで』とするから、つらい。一年一年、体調や金銭面について夫婦で話し合い、ゴールを決めればいい」

前出の原院長も、

「終結は、患者さん自らが納得して決めることが望ましい」

と考え、約4年前から「42歳からの妊活教室」と題したセミナーを始めた。染色体の異常や流産が増えること、高齢での妊娠リスクを淡々と説明している。43歳になると、夫婦で「あと1年宣言」を出すよう促す。少しずつ子どものいない人生と向き合ってもらうのだという。

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