通販は「欲しくさせる」ためにここまでやる なぜ高くても「買ってしまう」のか?
大量の情報を提供して顧客を獲得するためには、媒体・制作のコストがかかります。その投資を回収するためにもコミュニケーションの技術が使われます。ひとたび買った消費者には高い商品を買い続けてもらいたい。ですからeメール・ダイレクトメール・コミュニティ・会報誌・商品提案など、厚いコミュニケーションを顧客の一人ひとりにパーソナライズして届けます。
そのうちに消費者の中で「この会社は正直に、きちん作った商品を毎月お届けしてくれる便利なところ」などという認識がつくられていきます。商品に情報が付加されることによって、消費者は通販ブランドについてポジティブな記憶・経験を積み上げていきます。ブランドへのロイヤリティが育っていく。その結果、単価が高い商品でも満足しながら継続購入をするのです。
当然ですが、単にたくさん情報を提供すれば高く売れる、売れ続けるというわけではありません。提供する情報の内容が売れ行きを決定的に左右します。経験に基づく表現技術を用い、商品に即した検討を経て、テストを重ねて検証されたコミュニケーション設計が必要です。
綿密にデザインされた多量の情報で高い値づけを正当化する、顧客生涯価値・ライフタイムバリューを積む、これによってROI・投資回収率が高い通販ビジネスが成立します。
通販に向かない商品って?
ここまで、通販商品は「高くても売れる」とお話ししました。
では、カニや明太子などの、単価の高い高級品こそが通販に向いているのかというと、それほど単純な問題ではありません。読者の中にも、年末や冬の寒い時期になると、ついつい通販でカニを買ってしまうという方がいるはずです。たしかに1万円程度の価格のカニが、シーズンになると売れるのは事実です。
しかし、多くの家庭では、通販でカニを買ってもせいぜい年に1回くらい。これではカニを売るためのコストを考えたときに、会社にはほとんど儲けが出ません。通販会社にとっての理想は、月3000~4000円くらいの商品を半年、1年、あるいはそれ以上継続して購入してもらうことなのです(基幹商品と関連商品で合計単価を上げるというパターンもあります)。
実は、久原本家が通販ビジネスに進出したとき、最初に売り出したのが、単価5000円の明太子だったのですが、これは儲かりませんでした。同業の醤油メーカーも心配まじりの忠告をされたそうです。「通販なんかやっても儲かりませんよ」と。
しかし、同社は「5000円の明太子を毎月買う家庭は存在しない」という事実に気づき、毎日使うだしに着目して、茅乃舎だしの販売を始めました。だしパックなら多くの家庭が継続して購入してくれるだろうと見越したわけです。
今、茅乃舎だしは、年商100億円を超える大ヒット商品となっています。
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