なぜ日本は「エセ日本人」だらけなのか? 「健全な愛国心」と「不健全な愛国心」

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日本人に限らず「〇〇人になる」ということは、実は大変な努力と勉強がいる。それをしないで「〇〇人になる」などということはありえない。世界の多くの国では、これが当たり前である。なぜなら、大抵の国家はいくつかの民族コミュニティの集合体であり、日本のようにほぼひとつの民族、ひとつの言語、ひとつと言っていい文化で成り立っていないからだ。

たとえばアメリカには、もともとアメリカ人という国民は存在しなかった。新大陸を目指して欧州各地から来た移民が、やがてアメリカ人としてまとまっていったわけだから、アメリカ人となるには人工的な努力が必要だった。

その象徴が、星条旗(アメリカ国旗)への忠誠である。

アメリカ人は子供の頃から忠誠を誓う

9.11(ナインイレブン:同時多発テロ)の後にニューヨークに行くと、街中のほとんどのビルに星条旗が掲揚され、道行く車も星条旗をはためかせて走っていた。それは、日本人の私には異様な光景だった。これほどたくさんの国旗が街を埋め尽くすのを見たことがなかったからだ。

私が育った家では、祝日でさえ日の丸を掲げなかったし、日本の教育現場では日の丸の掲揚をめぐって長年にわたり教師がもめていた。

アメリカの小学校に子供を行かせた方ならご存知だと思うが、子供たちは毎朝、星条旗に向かって全員起立し、片手を胸に当て、「忠誠の誓約」(The Pledge of Allegiance)を唱える。

「私は、わがアメリカ合衆国の国旗、すべての人々に自由と正義が存する、分かつことのできない、神の下での一つの国家である共和国に忠誠を誓う」(I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands: one Nation under God, indivisible, With Liberty and Justice for all.)

これは公立ならハイスクールまで続く。この誓いの文言を暗誦できない子供はいない。だから、アメリカ人かどうか知りたければ、この「忠誠の誓約」を暗誦できるかどうかを試してみればいい。

ちょっと話がそれたが、ともかく、こうした人工的なプログラムにより、子供たちはアメリカ人になっていくのである。これは、多民族社会のアメリカがまとまるには必要なことかもしれないが、この光景を目にすると、戦後教育で育った私にはやはり奇異に映る。

今の日本の教育現場には、日本人をつくっていくというプログラムがない。しかし、戦前は違った。私の父は戦争に行った世代だから、教育勅語、歴代天皇名を暗誦できた。戦前は、軍国主義と言われようと、それに適した日本人をつくるプログラムは存在していたわけだ。

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