なぜ日本は「エセ日本人」だらけなのか? 「健全な愛国心」と「不健全な愛国心」

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さて、そんなことがあってしばらくして、私にとってショックな出来事が2つ起こった。あるとき家族で、女子のバレーボールのテレビ中継を見ていると、娘が家内にこう聞いた。

「ねえ、あれなあに? ほら、みんなが持っている赤い玉が書いてあるの」

「赤い玉って、ああ、日の丸のこと?」

「あれ、日の丸と言うの? それ、なあに?」

なんと、娘は日の丸が日本国旗だと知らなかったのである。

インターナショナル・スクールでの言語は英語だ。主にアメリカ人の子供、それ以外の国の子供、そしてハーフ、帰国子女、純粋日本人の子供(わが家の娘の場合)と、国と民族はさまざまだが、共通言語は英語だ。日本語を使うと、先生に注意されデメリット(減点)をもらう。

とはいえ、日本にあるため、日本人の生徒には日本語の授業が組まれていた。また、家では日本語だし、「あいうえお」などの読み書きは親も教えていたので、まさか、日の丸を知らないとは思いもしなかった。

子供の頭の中に、国境はない

それからまたしばらくして、家族で北海道旅行をすることになった。このとき、札幌に向かう飛行機の中で娘が私にこう言った。

「パパ、飛行機を降りたら何語をしゃべればいいの?」

それまで、娘が飛行機に乗って行ったところは、アメリカと家内の実家の九州・宮崎しかない。だから、日本語か英語のどちらなのか聞きたかったのだろう。このとき私は、子供の頭の中には国境がないということを知った。

この2つの出来事から、私は、娘を日本人に育てるには、それなりのことをしなければならないということを悟った。異文化教育、英語教育は足りても、今度は日本文化や風習、歴史などの教育が足りなくなる。それなら、そちらは学校では無理なので、私自身が教えなければならないと、このとき思った。

これは、海外で現地校に通いながら週末は日本人学校に通うのと同じことだ。ただ、日本人学校は日本の教育をそのまま持ち込んでいる。しかし、家庭で私が「一人日本人学校」をやる以上、自分が経て来た日本の教育の悪い部分はやめようと思った。

当時は、1980年代のバブル真っ盛りの頃で、いま思うと日本中が傲慢になっていた。そんな中で、国際化が叫ばれ、自虐史観批判があり、平和ボケや憲法議論などが盛んだった。しかし、私はどの意見にも賛同できなかった。

そこで、今後、娘が大人になるまでに、「日本人とは何か」ということを自分なりに考え、それを娘に教えていこうと思った。

※ 次回は、娘のインターナショナル・スクール入学時の話を中心にお届けします

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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