巷の「BABYMETAL論」は、ほぼ間違っている この3人組は、なぜ世界で成功できたのか

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 海外公演にも参加してB氏が感じたのは、BABYMETALファン層の厚さだという。「日本でも来場する年齢層が10代からお年寄りまでいて、幅広いなぁと感じていたんですが、ウェンブリー・アリーナに行ってみると、まったく同じなんですよ。こんなに年齢層の幅、ファン層の幅が広いメタルのアーティストなんて過去に見たことがない。下は10歳、上は70代までライブに足を運んでます。BABYMETALファンという10歳の娘を連れてライブに来ていた英国人もいました。メタルの新境地を開拓している証のひとつじゃないでしょうか」。

元ミュージシャンのC氏は具体的にBABYMETALの魅力を語りながら、確かな実力を感じたからこそファンになったと語り始めた。BABYMETALの魅力には、かわいさも含めた“アイドルユニットとしての完成度の高さ”にもあるが、世界的に人気が広がっていったのは、SU-METALの声質と歌唱力の高さ、身体能力の高さがあるからだと指摘した。「BABYMETALはダンスユニットだし、彼女たちは“演らされてるだけだ”と揶揄されることも多いですね。でも、一線級のメタルバンドのフロントマンで、作曲、編曲、演奏までやってる人が何人いるでしょう? そんな些末なことではなく、ボーカリストとして、アイドルとしてのSU-METALの才能に注目すべきですよ」。

以下、やや長くなるがC氏が一気に語ったことをまとめて紹介する。

「BABYMETALの楽曲は、どれも難しいリフをたくさん取り入れて、リズムの取り方も難しいし、曲全体の構成も複雑です。でも、日本のスタジオミュージシャンは上手な人が本当に多いから、練習すれば十分にこなせるレベルです。海外ツアーを経験して、バックのKAMIBANDと呼ばれるサポート隊も進化しているんですが、彼らは換えが利く(交換できる)存在なんですね。しかし、3姫の交換はできない」

核は「SU-METAL」のボーカル

「そもそも、音楽としてのBABYMETALは、SU-METALが持っている歌唱力や身体能力、体格などを活かすことによって、その核となる部分が生まれてるんですよ。彼女をグループの中に入れると、ひとりだけダンスも大きく目立ってしまい、歌い出すとほかの子たちとのバランスが取れなくなる。それに対して、BABYMETALはSU-METALを中心に、ダンスでパフォーマンス全体を彩るYUIMETALとMOAMETALで構成され、SU-METALの魅力が最大限に活かされる構成になってます。もちろん、YUI-MOA2人のダンスやかわいさあってのBABYMETALなんですが、個人的には核はやはりSU-METALのボーカルですね」

「彼女の声は会場の奥にまでよく“通る”んですよ。脳みその真ん中に直接入ってくるような声。実際のライブは録音音源とは違って、特にメタルとなるとすさまじい爆音の中で行われます。ボーカルの音量も抑えめで、むしろオマケ的だったりするんですが、“がなり”も“ビブラート”もなしに、カーンとすっ飛んできて、クリアさや伸びやかさを失わずに胸に突き刺さる。こんなボーカリストはほかに知らないし、世界的に見ても希有な才能。バンドをやってきた人間なら、巨大なフェス会場でメタルバンドをバックにした爆音の中で、“歌を聴かせる”ことがどれだけスゴイかわかるはず。しかも、2時間のライブパフォーマンスで踊りながら、あの歌唱を維持できるんですから」

「加えて偶然とはいえ、3人共にそれぞれ違ったタイプの美女に成長して行ってる。これがブサイクだったら、結果は違っていたかもしれない。いろんな偶然が重なった結果が今のBABYMETALだけど、メインボーカルを中心にほかの2人やプロジェクトメンバーの才能によってチームの力が引き出されているという意味では、少し古いけどキャンディーズの21世紀進化版だと思う」

C氏は、ここまで一気に喋りきった。

なるほど。くしくも3人組アイドルのキャンディーズの元マネージャーが彼女たちの所属するアミューズの会長、というのも巡り合わせなのだろうか。

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