巷の「BABYMETAL論」は、ほぼ間違っている この3人組は、なぜ世界で成功できたのか
その後、北米で快進撃を続けた。好きか嫌いかは別として、ロックファンならば「あぁ、あの女の子たちね」と認識するような存在になっている。メタルファンともなれば、奇異の目で見るアンチから熱狂的ファンまでが毎日のようにネットで議論を交わしているほどだ。
一方、この日本的アイドルグループというフォーマットが成功したのはなぜか、J-POPカルチャーを輸出するためのヒントにならないのか、といった文脈での議論も繰り返し行われてきた。
筆者もひとつの成功事例として昨年来、BABYMETALを取り巻くビジネス環境や議論に注目していたのだが、いまひとつシックリした仮説に出会えていない。もちろん、BABYMETALを生み出したプロデューサーのKOBAMETALに取材し疑問を直接ぶつけることができればいいのだが、取材を打診した4月以降、ワールドツアーもあってその機会を得ることはできていない。
KOBAMETALに話が聞けないとしても、なんとかBABYMETALについて深く分析できないものだろうか――。そこで企画したのが、純粋な音楽ファンとしてBABYMETALにハマっている3人の男性を集めての座談会である。
A氏は40代後半のオーディオ機器メーカー広報。学生時代からメタルバンドを聴きまくってきた、今もモッシュピット(ステージ前のスタンディングフロア)に突撃する生粋のメタルファンである。B氏は40代半ば。IT系マーケティング職で、こちらも学生時代からのメタルファン。しかしスタンディングで暴れるほどではなかったというが、前述のウェンブリー・アリーナのコンサートにも弾丸ツアーで参加するほど熱心なBABYMETALファンに変貌した。
C氏は50代前半、元ミュージシャン(ギタリスト)でありながらプログラマー、写真家という肩書きも持ち、座談会に参加したメンバーの中では唯一、自分の連載を持つライターでもある。
「逆輸入」と表現するのは誤り
この日、初めて顔を合わせた3人が声をそろえたのは「BABYMETALは逆輸入アイドルではない」ということだ。4月からの海外での快進撃を見て、それまで彼女たちを知らなかった層が注目しているのを「逆輸入と表現するのは誤り」と指摘する。
今年9月の東京ドーム公演はあっという間にソールドアウトし、翌日の追加公演も売り切れるだろう。しかし、2年半前(2014年3月)の時点で武道館を2日連続で満杯にした彼女たちを逆輸入と表現するのは、メディアとしてあまりに感度が悪すぎるとC氏は指摘する。「日本では小さな会場では入りきらず、ドームのような大会場でもチケットは取り合い。しかも今年のワールドツアーは3回目ですよ。一昨年はレディ・ガガのオープニングアクトに指名され、ツアーの最後にはドラゴンフォース(英国のトップメタルバンド)と共作した作品を発表。昨年、2回目のワールドツアーでは共演も果たしていました」(C氏)。
A氏も次のように指摘する。「2年前、英国で行われたフェスのSonisphere Festival UKでメインステージを大いに盛り上げ、このときの映像がYouTubeで広がり、メタルファンに拡散していったことが、僕らのような“アイドルファンではない”BABYMETALファンが急増するターニングポイントだったと思います。武道館のわずか半年後のことですよ。彼女たちは、もう何年も前に音楽ファンの心を揺らしていたんです」。
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