日銀新総裁を待ち受ける難題 超金融緩和策には大きな副作用(日銀ウォッチャー)

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新総裁が長めの国債の購入を最初は大胆にやって見せても、徐々にそれによる将来のリスクが気になって彼は頭を抱えるようになるだろう。なぜなら、長い国債を買えば買うほど、金融政策正常化策(出口政策)は困難になっていくからである。経済が回復したときは、金融緩和の行き過ぎを避けるために、市場から購入した証券を売却していく必要がある。しかし、期間が長い証券の売却は、長期金利や住宅ローン金利を急騰させる恐れがあり、技術的な難しさに直面する。

「バーナンキFRB(米国連邦準備制度理事会)議長はそんなことを気にせずに買い続けているではないか」と思う人もいるだろうが、FRBはゼロ金利解除時期にその問題で七転八倒して苦しむ可能性がある。FRB幹部は、超過準備への付利の引き上げや、短期資金吸収策(リバースレポなど)を組み合わせれば対処できる、と表向きは述べているが、内心では不安を感じ始めている。

それゆえ、先月の本欄(「賃金を上げるには成長戦略が必要」)でも触れたように、米ダラス連銀のフィッシャー総裁は「一度入ったら出られない」という意味で、米国の今の政策を「ホテルカリフォルニア的金融政策」と呼んでいる。

米FRBがQE3で抱える評価損の試算を公開

また、昨年12月のFOMC(米国連邦公開市場委員会)議事要旨によると、12人の投票メンバーのうち、1人(カンザスシティ連銀のジョージ総裁)はQE3(MBSと長期国債の買い入れ)の継続に反対し、7人前後がQE3を今年末までに縮小か終了させることを主張していた。彼らはQE3の拡大が出口政策を困難にすると恐れている。

また、中央銀行が民間から長期国債を買い取るという行為は、金利上昇リスクを民間部門から公的部門にシフトさせることを意味する。FRBのスタッフが先月発表した今後の収益見通しでは、QE3をもし今年末まで続けて資産を膨張させると、最悪のシナリオの場合、2018年にFRBは円換算で30兆円を超える巨額の評価損を抱えることになる。

2016年の選挙では共和党が多数派を握るかもしれない。彼らがFRBの評価損を見て怒り、FRBの独立性を剥奪しようとしたら、米国のインフレ期待は不安定化していくだろう。

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