スズキ「ワゴンR」はなぜここまで凋落したか かつての絶対王者も抗えない市場の変化

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ワゴンRは初代からコンセプトを変えずに作られている、稀有な日本車だ。ユーザーの中にはそれに飽きて、より広い室内を持つタントや、個性的なスタイリングのハスラーなどに流れた人もいるだろう。ただしワゴンRはワゴンRの枠内で、地道に進化を続けているのも事実だ。

現行ワゴンRは助手席下に小型リチウムイオン電池を積む

通算5代目となる現行型は、助手席下に小型リチウムイオン電池を積み、スターターモーターをモーター機能付き発電機に変えることで、アイドリングストップ、加速時のモーターアシスト、減速時のエネルギー回生を実現する、マイルドハイブリッド車となった。

現行アルトで車両重量600kg台を実現した軽量化技術もいち早く投入しており、2WDでは最上級グレードでも700kg台という数字を実現した。軽ワゴンのカテゴリーで700kg台を達成しているのはワゴンRだけである。

その結果JC08モード燃費はリッター33kmと、軽ワゴンでトップの数値を達成した。実際に運転しても、軽量ボディとモーターアシストのおかげで、自然吸気エンジンでも活発に走る。スーパーハイトワゴンではターボが欲しいと思うこともあるが、ワゴンRではターボはいらないと多くのユーザーが感じるだろう。

スタンダードを磨き上げる

広さか維持費か個性か。現在の軽自動車の嗜好性は、この3方向に集約できそうだ。スタンダード路線を貫くワゴンRがベストセラーに返り咲くのは難しいかもしれない。しかしスズキはジムニーのように、販売台数の少ない車種でも需要があれば進化させていくという姿勢も持っている。

現行ワゴンRの荷室

一方、販売台数が落ちたからといってコンセプトを変えることは、避けたほうが良さそうだ。スズキにはかつて「MRワゴン」という、ワゴンRをベースに個性を強調した軽乗用車が存在したが、モデルチェンジのたびにコンセプトを変えた結果、3代で消滅してしまった。タントもハスラーも、ワゴンRがあったから生まれた。スタンダードを磨き上げていくことが、今のワゴンRにとって重要なのだろう。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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