スズキ「ワゴンR」はなぜここまで凋落したか

かつての絶対王者も抗えない市場の変化

実はこの構図、小型乗用車のランキングに似ている。小型乗用車では、コンパクトカーと呼ばれる小型のハッチバックと、スライドドアを持つ箱型ミニバンが人気だ。価格が安く燃費が伸びるコンパクトカーを求める層と、さまざまな用途に使えるミニバンを求める層がボリュームゾーンになっている。この状況が、軽自動車にも押し寄せつつあるようだ。

アルトの統計には「ラパン」「ターボRS」「ワークス」も含まれており、燃費だけで売れているとは言えないが、標準車のカタログ燃費が軽自動車ナンバー1の37km/Lであることは大きいだろう。加えて現行アルトはデザインや走りもレベルが高い。軽自動車のハッチバックはビジネス用として使われることも多く、それを嫌うユーザーもいるが、地方都市などで見るかぎり、現行アルトに関してはオーナードライバーが多い。

後席は子供の着替えやベビーカーの置き場所

一方のスーパーハイトワゴンは、初代タントが発表された2003年当時はスライドドアではなかったこともあって、それほど注目されなかった。助手席側をセンターピラー内蔵のスライドドアとした2代目もそうだった。

だが2008年にスペーシアの前身である「パレット」、2011年に「N-BOX」といったライバルが両側スライドドアを備えて登場し、タントも2013年登場の現行型で両側スライドドアとしたことで、売れ行きに拍車が掛かった。

軽のスーパーハイトワゴンはどれも後席が驚くほど広い。スライドをもっとも後ろに下げれば、身長170cmの筆者なら足を前に伸ばすことさえ可能だ。ここまで広くなくても楽に座れると思う人が多いだろう。

それもそのはず、多くのスーパーハイトワゴンユーザーは、座るためにこの空間を欲しているわけではない。子供の着替えやベビーカーの置き場所として活用している。テールゲートは軽自動車では手動で、跳ね上げると小柄な人では開け閉めしにくいのに対し、スライドドアは多くの車種で電動となっており、アクセスしやすいからだろう。

初代ワゴンRは運転席側にリアドアがない1+2ドア

1993年に初代がデビューしたワゴンRのコンセプトは、これらのスーパーハイトワゴンとはまったく異なる。「2シーター+マルチスペース」が当初のコンセプトだったからだ。

それが証拠に初期型は、運転席側にリアドアがない1+2ドアのみだった。リアシートの前後スライドはなく、代わりに背もたれを倒すと座面が同時に沈み込み、低く平らなフロアを作り出せる、ダイブダウン方式と呼ばれる凝った機構をいち早く採用していた。広さより使いやすさを優先した作りだった。

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