私立大「財務力ランキング」ベスト30
半数近くの私立大が“赤字経営”
財務力の強い大学を4指標で総合ランキング
ここでは、厳しい経営環境の中、生き残りを可能にする強い財務力を備えた大学を、「収支を見極めた財務マネジメントが実現されている大学」と定義して探した。
具体的には、経営健全度(収支バランスを示す帰属収支差額比率)、教育充実度(教育関連支出の充実度)、成長度(収入や教育関連支出の伸び率)、財政余裕度(手元資金の余裕度)という4つの視点から総合評価を行った。上位にランクされる大学は、現在、健全な財務状況が確保されていると同時に、将来の環境変化に対応するための資金余力も備えていると考えられる。
総合ランキングで上位に入っている大学は、企業や公益法人をスポンサーに抱える大学や、医療機関や事業で大きな収入を得る大学が多い(なお、医科や歯科の単科大学は、医療機関の財務の影響が中心と考えられるため、集計から除外している)。また、スポンサーや事業収入が大きくなくても、支出を柔軟にコントロールすることで強い財務を築いている大学もある。
総合1位は東洋食品工業短期大学。1部上場企業、東洋製缶の創立者が創った東洋缶詰専修学校に由来する学校法人である。入学定員が35人と小規模な学校法人だが、安定的に収支差額がプラスで、11年度には、支出の15倍超に当たる58億円の寄付金収入があった。5位の茨城女子短期大学や6位の函館大谷短期大学は、授業料収入が最大の収入源だが、収入変動に合わせて支出をコントロールし、着実に収支差額のプラスを確保し、資産を蓄積している。
財務力の強弱による違いを、総合ランキングの上位100法人と下位100法人で比較した。収入面で見ると、上位大学は下位大学に比べ、総収入に占める教育外収入(事業収入や病院収入など)の比率が高く、学納金(学生生徒等納付金の略で、授業料など)の比率が低いことがわかる。支出面で見ると、上位大学は教育研究経費に多く配分されている。つまり、財務力が強い大学ほど、授業料以外の収入源を確保し、そこで得た収入を教育関連の支出に分配して、提供する教育の付加価値を上げる好循環が出来上がっていると推察できる。