治安も最悪、リオのテロ対策に残る「懸念」 オリンピック直前に非常事態宣言も
8月5日にオリンピックとパラリンピックの開催を控えるブラジル、リオデジャネイロ市。しかし、世界中のアスリートにとって夢の舞台となるこの地は、開幕を1週間後に控えながらもお祭りムードからは程遠い状況にある。
「地獄へようこそ、この町では警察も消防も機能しない、誰も安全を保証されない」――。6月末、リオの空の玄関口、トム・ジョビン国際空港に英語で書かれた横断幕を掲げたデモ隊が出現した。デモを行っていたのは、給料の遅延・未払いや仕事場の環境悪化に抗議する警察官や消防士たちだ。
昨年からリオデジャネイロ州の経済は崩壊の一途をたどり、病院や学校などの職員はもちろん、警察官や消防士の給料まで遅延・未払いが起こった。治安はどんどん悪化し、今年だけでも同州で60人以上の警察官が殺害されている。この状態にたまりかねた警察官や消防士がデモを行ったのだ。
ニースのテロ受け体制を強化したが……
実はこれに先駆けること10日前、同州は6月17日に税制が危機的状況に陥ったことを理由に「非常事態宣言」を発令し、連邦政府に対して財政支援を要求していた。そこで、テメル暫定大統領がオリンピック緊急援助金を出すことを決定。給料はようやく支払われ始め、さらにオリンピック開催中は、警察官の日給を150%昇給することも決まった。
こうした中、世界中の関心が集まるのがテロ対策だ。とりわけ、7月14日にフランス・ニースでテロ事件が発生してからというもの、テロに対する警戒感は高まっている。地元紙によると、テロリストがすでに隣国のウルグアイやパラグアイに侵入しているとの情報が流れているほか、14日にはフランス紙が「イスラム国(IS)」のメンバーが、オリンピックでフランス人選手団を狙ったテロ攻撃を計画していた疑いがあるとフランス治安当局のトップが語っていることがわかったと報じるなど、安心できる状況にはない。
これを受け、ブラジル政府はリオオリンピックに向けた警備計画の厳重化を発表。オリンピックの開会式・閉会式が開かれる、サッカーの聖地マラカナンスタジアムで大掛かりなテロ訓練が行われたほか、国内線飛行機の機内持ちこみ品の規則や検査を厳重化するなど対応を急ぐ(ところが、マラカナン付近の住民や空港利用者には、訓練や規則の変更の連絡が行き渡っておらず、周辺の交通機関は混乱。空港にも利用客の長蛇の列ができるなど、いかにもブラジルらしい、計画性のない、行き当たりばったりの処置であることが露呈した)。
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